テレビゲームを再開するとき、いちいちパスワードを入れてた時代があった。

ゲームを途中から再開する方法として、パソコンゲームのフロッピー代わりに生まれたパスワード。
パスワードを書いたメモをなくしたり、メモした字が汚くて読めなかったりして、しぶしぶ最初からやり直すことが何度もあった。

その救世主ともいえる“バッテリーバックアップ”が登場したのは数年後。カセットが記憶してくれるシステムは、メモと入力の煩わしさから解放してくれた。ただバッテリーがもつ5年前後を過ぎると、ある日突然、何の前触れもなくデータが消えてて、しぶしぶ最初からやり直すことが何度もあった。

さてそんなことを思い出しつつ本題。
このバッテリーバックアップの“バッテリー”とは何だったのか、みなさんはわかって遊んでただろうか。
実はあのエネルギー源、ごくごく普通のものだったことを僕は今まで知らなかった。

バッテリーバックアップを世界で初めて搭載したゲームソフトとされる、ロールプレイングゲーム「ハイドライドII」(MSX版)を開発していた、ティーアンドイーソフト(当時T&E SOFT)の内藤さんに話を伺った。
「バッテリーバックアップのカセットでは、ごく普通のボタン電池が使われていました。その寿命がだいたい5年と言われていたんです」
つまりファミコンやスーファミの時代、セーブ機能のあるカセットには、普通のボタン電池が入っていたのだ。当時はデータを記憶させとくために、遊んでないときも電力が必要だった。そのため、小さなボタン電池が使われていたという。


バッテリーバックアップを導入した経緯はというと、
「1作目のハイドライドでは短いパスワードで済んでいたのが、IIになりマップが拡大し、パスワードで入力するとかなり長くなってしまうことがわかりました。そこで、当時ちょうど業者(加賀電子)から売り込みのあった、バッテリーバックアップを搭載したんです」

ハイドライドIIの説明書にも、経緯は説明されていた。
“ハイドライドIでは、ゲームの途中データはパスワードによって保存できたのだが、今回のハイドライドIIでは、あまりにも途中データの要因の数が多すぎて、もしパスワードによって処理しようとすると、約50文字のおっそろしく長ったらしいものになってしまう。これじゃあユーザーの人達もかったるくてしょうがない”

バッテリーバックアップにした分、ソフトの値段は上がったけど、煩わしさが消えて評判は上々。その後、コストが下がったフラッシュメモリに取って代わられるまで、多くのソフトに搭載されていた。ロールプレイングゲームの元祖とも言われるハイドライドは、バッテリーバックアップでも元祖だったのだ。


長時間かけて積み上げたものでも、一瞬で消えることがあるっていう「物の儚さ」を子供に見せつけた、バッテリーバックアップ。
ただその厳しさゆえに、今では懐かしい思い出として、頭のセーブデータから消えずにロードされてます。
(イチカワ)

※「ハイドライド」は、現在ディーワンダーランド社がその権利を保有しています