手足の先だけ靴下をはいたように白くなっている猫は、「靴下猫」、「足袋猫」、「ソックス」などと呼ばれている(以下、靴下猫と呼びます)。中には“片方どこかに落としてきた”ような子や、まるで“脱ぎかけ”や“穴あき”っぽくなっている子もいたりして、なんとも可愛らしい。


私は道端に猫がいると、すぐに「あっ猫だ!」と反応する猫センサーの持ち主なので、日々、結構な数の猫たちに遭遇しているが、“白い靴下”をはいた猫は多いのに、その逆の“黒い靴下”をはいた猫には会ったことがない。白い体に、黒やトラ柄の“しっぽカバー”をしている猫には、時々出会うのだけれど。

黒い靴下をはいた猫というのは存在しないのだろうか?

お世話になっている動物病院で聞いてみたところ、「他が白いのに足先だけ黒っていう子はいないです。シャムネコやヒマラヤンなんかは、口元と耳、しっぽと手足に色がついているのが特徴だから、黒靴下と言えなくもない気はしますが……」とのこと。

なんでも猫の色というのは、体の上のほうからソースを垂らすようにしてついていくものらしい(参考文献:GAKKEN『うちの猫のキモチがわかる本 vol.23』)。色のソースが上から垂れていって、完全に下に届く手前で止まると足の先だけが白いままになり、まるで靴下をはいているように見える状態になるのだそう。
色ソースの垂れ具合は左右対称ではないので、片側だけハイソックスになったりもするし、ソースが飛んで、離れた部分にブチがついたりすることもある。

そんなメカニズムなので、“体が真っ白なのに黒靴下を履いた猫”や“背中が白いのにおなかが黒い猫”は存在せず、靴下猫の靴下はみ~んな白というわけ。なお、しっぽや頭の上、鼻のまわりは色が強く出やすい部分なので、体が白くてしっぽだけが黒い猫というのは存在する。

余談だが、そんな靴下猫の中でもっとも有名なのは、アメリカのクリントン前大統領一家が飼っていたソックスくんだろう。当時ホワイトハウスのホームページには鳴き声を公開するページまであったようだが、のちにやってきた犬と折り合いが悪かったことから、夫妻がホワイトハウスから引っ越す際に秘書に引き取られた。在任中の大統領がソックスくんを抱いている姿がグッズになったりもしていたので、愛猫家としてはちょっと切ないのだが…。
ちなみにソックスくん、仲の悪かった犬のバディくんと一緒に『Dear Socks, Dear Buddy』(ヒラリー・クリントン著)という本にもなっています。

猫の色や模様の出方は複雑で、専門家にも予測が難しいものだそう。色のソースが絶妙なところで止まることによって生まれる靴下猫。今度道で出会ったら、ますます熱い視線を送ってしまいそうです。
(磯谷佳江/studio woofoo)