5月31日朝、曇り空の下、私は東京千代田区にある法務省を目指していた。年に一度、法務省で開催されるイベント「赤れんがまつり」に参加するためである。


早めに着いたつもりが、すでに入り口の外まで続く長蛇の列。このイベントに対する人々の関心はかなり高いようだ。それもそのはず、このお祭りのメイン企画は「刑務所食事体験」。刑務所で支給される食事を試食することができる貴重な機会なのだ。しかも無料で! 無事整理券を手に入れた私は、指定された時間に試食会場へ向かった。

今回試食できたのは「のっぺい汁」というメニューで、日本各地で食べられている郷土料理だ。
鶏肉・シイタケ・にんじんなど、具だくさんな上にとろみがついていて、量の割りに食べ応えがある。やや薄味に感じたのは、やはり刑務所で日々を暮らす人々の健康を気遣ってのことだろうか。ちなみに実際は、この「のっぺい汁」に加え、おかず2品とご飯がついて昼食メニューとなる。なかなか満足のいくメニューではないだろうか。

それにしてもこの試食会場、地上20階にあって見晴らしがいい。広々と皇居が見渡せて、ちょっとした展望室のよう。
普段は食堂として使われているそうだ。

1階フロアには、日本全国の刑務所グルメの写真パネルが貼り出されている。函館少年刑務所では「ジンギスカン」、山形刑務所では「芋煮汁」、沖縄刑務所では「沖縄そば」と、地方色豊か。あー全部試食してみたい! 個性あふれる各地の刑務所グルメを手軽に食べられるお店があったら流行るのではないだろうか。

私の隣にいた妙齢の女性はパネルを見ながら、「もう! 私より全然いいもの食べてるんだもん!」とプンプンしていた。確かにこれらの写真を見ていると、自分の普段の食生活より、はるかにバラエティ豊かに思える。
案内係の方によれば「一定のカロリーを越えないように気をつけながら、コストも考えつつ、できる限りバリエーションを出せるように苦労している」とのことだ。これらの食事が刑務所の中の人々に与える喜びは並々ならぬものに違いない。

その場を立ち去ろうとすると、さきほどのマダムたちが、「わたしたちも刑務所入れてー!」と言って、職員の方を困らせていた。

もちろん、ここに掲載されているのは、特別な日のメニューであり、毎日ジンギスカンが食べられるわけではない。学校の給食で、月に一回アイスクリームがデザートとして添えられる日があった。あれのような感じかもしれない。


刑務所の食事を味わうことはできないが、法務省の食堂を利用することは可能(ただし、受付にて住所・氏名等の記入が必要)とのこと。公共食堂ならではのお手頃価格だったのでぜひお試しあれ!
(スズキナオ)