子供がたくさん勉強した証の短くなった鉛筆。使い道はないけれど、ゴミとして捨てるのも忍びなく、今までなんとなくためてきた。
小学校に入学してから約6年間で使った鉛筆を数えてみると、黒鉛筆が92本、マルつけ用の赤青鉛筆が43本、色鉛筆が15本、合計なんと150本!
入学してから6年生の冬までに使った鉛筆たち
どっちを向いてもエンピツいっぱい、東京ペンシルラボ
短くなった鉛筆を供養してくれると聞いて、東京都葛飾区の鉛筆メーカー、北星鉛筆株式会社を訪れた。
実は鉛筆製造は東京の地場産業。全国に40社ほどある製造会社の8割近くが東京都にあり、中でも荒川・葛飾に集中している。北星鉛筆もその一つで、創業67年になる老舗の鉛筆メーカーだ。
敷地内に入ると、まず壁に描かれた巨大な鉛筆が目に入る。
世界一大きな鉛筆の絵?
事務所の入り口、案内看板、自動販売機まで、どこもかしこもエンピツがいっぱい!
鉛筆に対する並々ならぬ愛とこだわりを感じる。
工場見学はこちらです、かわいい案内板
鉛筆の下をくぐっておじゃまします
飲料の自動販売機もオリジナルの鉛筆デザイン
工場と同じ敷地内に立つ資料館「東京ペンシルラボ」。鉛筆の歴史から製造工程、鉛筆メーカーの現状など、ありとあらゆる情報が詰まっている。
鉛筆専門の資料館はめずらしいのでは? 専務取締役の杉谷龍一さんにお話を伺った。
「鉛筆の需要が低迷している中、メーカーとして何かできないだろうかと考えました。もっと鉛筆のことを知ってもらいたい、そのためには実際に見てもらうのが一番ということで、この資料館を開設しました」
鉛筆の情報がいっぱいの「東京ペンシルラボ」
徳川家康や伊達政宗も鉛筆を使っていた? 意外な歴史も知ることができる
予約をすれば工場見学や、鉛筆製造のときに出る「おがくず」をリサイクルした木製ねんど「もくねんさん」のワークショップも体験できる。
短くなった鉛筆はこちらへどうぞ、ほっこり笑顔の鉛筆地蔵
おがくず生まれの鉛筆地蔵。このお地蔵様に短くなった鉛筆を入れると、年に一度の供養祭まで預かってくれる。
我が身を削って人のため、まっすぐな芯が通った「鉛筆の道」
毎年12月に供養祭が執り行われる「鉛筆神社」。よく見ると鳥居の柱が六角柱、先には芯が……鉛筆の形!
鉛筆神社、鳥居の形に注目
供養祭では渋江白髭神社の宮司さんが丁寧にお焚き上げをしてくれる。
「短くなった鉛筆には人の気持ちがこもっています。ものには必ず寿命がある。大事に使って寿命がきたら、ゴミとして捨てるのではなく感謝して供養する。そうすることで、新しいものを長く大切に使う心も育つのではないでしょうか」
と、先ほどの杉谷さん。1年間で集まる鉛筆の量は衣装ケース2箱分くらい。正確に数えてはいないが「1万本以上になるのでは」とのことだ。
お焚き上げの後、焼け残った芯の部分は供養塔に埋葬される。
塔には「我が身を削って人のため、鉛筆の道」「短くなった鉛筆、ここに眠る」の文字。まるで人間のように最期まで愛され、大切にされている…。
お焚き上げで焼け残った芯はこの下に埋葬される
こだわりの逸品「大人の鉛筆」
お土産に「大人の鉛筆」はいかがだろう。ノック式で芯が出てくる仕組みはシャープペンと同じだが、軸は木製で芯も2mmと太い。持った感覚は鉛筆に近く、六角形の木軸が指にしっくりとなじむ。
大人の鉛筆、渋い和柄も選べます
“大人の”という名前だが、中学受験を目指す子供にも評判がいいらしい。削る必要がなく、芯が折れにくく、マークシートも塗りつぶしやすい。鉛筆と同じく正しい持ち方ができるため姿勢がよくなり、勉強に集中できて成績も上がるとか。
2018年の鉛筆供養祭は12月23日(日)に開催
小学1年生の国語の教科書で最初に出てきた言葉は「なかよし」、算数で習ったのは「10までのかず」。大きなマスの学習帳に一文字一文字時間をかけて書いていた。
あれから6年、今では立方体や円柱の体積を計算し、司馬遼太郎のエッセイを読み、ノートには「基本的人権の尊重」なんて難しい字が並んでいる。
長い人生を生きるために必要な“知性の土台づくり”を支えてくれた、150本の鉛筆。身を削って役に立ってくれた君たちに、小学3年生と5年生で習う漢字、「感謝」の二文字を贈りたい。
(宮沢弥栄子)
「鉛筆供養・鉛筆感謝祭」
・日時 2018年12月23日(日) 10時~16時
・場所 東京ペンシルラボ・北星鉛筆「鉛筆神社」
鉛筆供養は14時から実施。短くなった鉛筆を5本持っていくと新しい鉛筆1本と交換できる。鉛筆つかみ取りや「ねんど体験」などのイベントも開催。
東京ペンシルラボ ※工場見学は要予約
http://www.kitaboshi.co.jp/pencil-lab/
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