おでんの味付けや食べ方でどの地方の出身かがわかる。そう言われるくらいおでんの味や食べ方は全国津々浦々だ。


味噌にふりかけにと、種類豊富な食べ方の中でも、もっとも冬に合う食べ方といえば姫路の“生姜醤油おでん”をおすすめしたい。

“姫路おでん”として、すでにおでん好きの間では評判になっているが、そもそもこれは姫路を中心としたごく限られた地域でのみで実践されていたおでんの食べ方だ。
そのレシピは生姜醤油のタレを作りそれにおでんをつけて食べるだけ。と言うが、本場の食べ方はどうなのだろうか。

姫路おでん普及委員会の方に美味しい食べ方を伺ってみたところ、「まずは普通の薄いだしのおでんを作って頂きます。つけるタレは濃い口醤油にだしとお酒を少し混ぜた物、そこにすり下ろした生姜を入れると完成です」。
タレは付けて良し、上からかけて良しとお好みで。
「おでんを食べるときにまずはそのまま食べてから。今度はタレに少しだけつけて食べると、その味の違いがはっきりわかりますよ」とのことで実際にチャレンジしてみたところ、びっくりするほどにおでんの甘さが引き立つ。

醤油×生姜のコラボは見た目からしていかにも濃い。せっかくのおでんが辛くなってしまうのでは、などという心配はご無用。
生姜を入れているせいか醤油の角が取れて柔らかい口辺り。
ツンツンとした嫌な舌触りが消え、薄口好きの人でも安心して食べられる味なのだ。
味に変化が出るのでおでんの味に飽きてしまう人にもおすすめできそう。
さらに生姜醤油を出汁で割って片栗粉でとろみを付けた物をおでんの具にかければ、余り物で立派な一品料理まで作れるというおまけつき。

そんな生姜醤油に合う具は何だろうか。伺ってみると「大根ですね」と、おでんのキングはやはりここでも1位だった。
生姜醤油は具材の味を引き出す効果があり、だからこそシンプルな具が合うというのだ。


さてこの食べ方はいつごろからスタートしたのか。

いわゆるB級グルメがはやりだしたころからではなく、明治から昭和初期にかけてこの食べ方が始まっていたという。
つまりは姫路地方では当たり前の食習慣。むしろこの食べ方が他地方で食べられていないという事実に姫路市民は驚いたのだとか。

もちろん今でも当たり前に食べられていて、コンビニではおでん鍋の横にフリーで持って帰れるように小袋入り生姜醤油を用意。
おでん専門店でもリクエストをすれば生姜醤油を出してくれる店がほとんどらしく、その食習慣はしっかり市民の舌に根づいている。


ちなみにそんな市民に愛されるおでんは、おでんの枠だけにとらわれない。
ラーメンの上におでんを乗せ、さらにそこに生姜醤油をかけて味わう“姫路おでんラーメン”や、海の幸のお鍋におでんを入れた“姫路おでんじゃこ鍋”など様々な食べ方で楽しめるそうだ。

さらに姫路おでんは今年の秋に開催されたB-1グランプリにも出店済み。
B-1グランプリにはおでんが3店ほど出店したそうだが、いちばん量が多いと喜ばれ、エフエム秋田特別賞も受賞。
第6回大会の開催地としても正式に立候補するなど、姫路おでん普及への意気込みが感じられる。

そろそろ気温が下がりはじめ、全国的におでん日和が続いている今日この頃。


寒い日は熱々おでんに生姜醤油をつけて、体を芯からポカポカにしてみては。
(のなかなおみ)