子どもの頃、毎年、知人からポストに届けられた忘れられないクリスマスの贈り物がある。

それは、B5サイズくらいの巨大な板チョコ。
サンタやトナカイなどの絵が掘られているレリーフ状のチョコで、割るのも食べるのももったいなく、家族全員で少しずつ食べたものだった。

あれをもう一度食べたい! と思い、調べてみると、ネット上で私と同じような思い出を持つ人たちが見つかったが、メーカーなどは不明のまま。
一部で「モロゾフでは?」という推測を発見。そこでモロゾフに問い合わせると……。
「140円で送れる、ハガキより少し大きい『クリスマスカード』は毎年出していますが、それ以上の大きさはありませんね」

続いて、チョコレート全般に詳しい日本チョコレート工業協同組合に聞くと、
「いろいろ聞いてみましたが、『見たことはある気がする』という人がいる程度で、メーカーはわかりませんでした。ただ、芥川製菓さんかもという声も……」
芥川製菓とは、日本で3番目にチョコレート製造を始めた会社。
著名なホテルの高級チョコなどを扱っているらしいが、もしかして……?
「大きな板チョコは出していますが、ラベルがサンタやクリスマスツリーになっているだけで、チョコレートは浮き彫りになっておりません。チョコレートは型(モールド)に流し込んで作るんですが、型は高いものなので、あまりないと思いますよ」(芥川製菓)

日本で最初にチョコレート製造を始めた風月堂、2番目に始めた森永製菓にも聞いてみたが……。
「わかりません」(風月堂)
「1975年から82年までキングチョコレートという大きな板チョコを作っていたことはありますが、そこまで大きなものではありませんし、チョコレート自体に絵が描いてあったかはわかりません」(森永製菓)

……手がかりがなく、諦めかけたものの、「最後にもう一つ」と明治製菓に問い合わせたところ、
「クリスマスのチョコは一般販売しておりませんが、昔からチョコレートの製造を明治製菓でして、販売を株式会社協和さんがやっているものはあります」
なんと!! 鼻息荒く、株式会社協和に問い合わせると……。
「確かにレリーフ状のチョコは毎年作っております。ただ、一般販売はしていないんですよ」(商品開発部)

実はコラーゲンドリンク『フラコラ』などでおなじみの会社で、このチョコを扱うのは毎年たった1日だけ。
スタート時期は37年前からで、かつてはクリスマスにちなんだ絵だったが、数年前からはキティのチョコレートに変わっているという。


それにしても、どこで入手できるのだろうか。
「主な販売先は、薬系の卸、病院、薬局、企業向けで、クリスマスイベントとして扱われています。一般には販売していないので、知人にもらったという方は、お得意先企業や社員さん経由などでは?」

最盛期は80万枚ほどの実績があったが、グリコ・森永事件、さらにチョコレートの一般化などによって、ここ数年は30万枚〜40万枚弱に推移しているというこの商品。
調べても全然わからなかったのは、「一般販売していないため、情報をクローズにしているから」だった。
「お得意先に配るなど、特別な贈り物として長年利用していただいているので、価格等は未公開です。他の人が持っていない、知らないことも、嬉しさですから」

本当に幻のチョコレートなのだった……。

(田幸和歌子)