先日、長野県内のスキー場に出かけた。マイナス11度前後の吹きさらしに丸2日間、車を置いておいたときのこと。
寒冷地仕様の車で、バッテリーは来る前に新しく換えており、燃料も現地で給油していたのだが、それでもエンジンがかからなくなってしまった。

ディーゼル車をお持ちの方は、私と同じ体験をしたことがあるかもしれない。考えられる対策はしてきたはずなのに、エンジンがかからない……。結局、車のキーを断続的に回し、20分ほどして何とかエンジンはかかったが、こんな不安な思いはもうしたくない。原因は一体何なのだろうか?

さっそく、社団法人日本自動車連盟(JAF)愛知支部や自動車メーカーに取材を決行した。結果、「断定はできないが、考えられる原因」を2つ教えてもらうことができた。

まず、軽油が「凍って」しまったということ。凍るといっても氷のようにカチコチになるわけではないが、低温になると軽油中のワックス分が固まって軽油の流動性が悪くなるのだ。軽油は、流動性が保たれる温度の違いよって5種類に分けられており、地域や季節に応じた種類の軽油が売られている。このため、都市部などで購入した軽油で寒冷地へ行ってしまうと、少し寒くなっただけで軽油の流動性が悪くなってしまうことがあるそうだ。よく、「現地で寒冷地用の軽油を給油するように」と言われている所以がこれなのだ。

また、たとえ寒冷地用の軽油でも車を置く環境によっては流動性が悪くなって、“目詰まり”という症状を起こしエンジンがかかりにくくなることがあるという。
これは、ある一定以下の温度になると軽油が燃料タンクとエンジンとの間にあるフィルターを通りにくくなる現象だが、私が今回経験した気温はおおよそマイナス11℃。限界といわれる温度に達していた可能性もある。

もう一つの原因は、エンジンルームが冷えきってしまったこと。ディーゼル車には、エンジンがかかりやすくするためにグロープラグという装置があるのだが、エンジンがひどく冷えて、グロープラグが温まってもエンジンに熱を奪われてなかなか燃料が燃えなかった。今回の場合、何度もキーを回しているうちにピストンが空気を圧縮して出た熱などでエンジン内の空気が温まり、最終的に着火できたのではないかということだ。

寒冷地へ行く方へ。あまり冷え込まない地域から行くのなら、現地のスタンドでできるだけ多く給油しよう。そして、寒冷地用の軽油を入れたからといって安心せず、吹きさらしに置かないようにしたり、ボンネットに毛布や断熱材をかけるなど、車を冷やさない工夫が必要だ。もちろん、シーズン前には車の点検もお忘れなく。
(ミドリ)
編集部おすすめ