いつからなのか定かではないが、タダで持って帰ってもいい“フリーペーパー”のクオリティの高さが素晴らし過ぎる。じっくり読ませるフリーペーパーの草分け的存在と言ってもいい『R25』や、タワーレコードで配布されている『bounce』、などなど。
貴重な情報源としてだけでなく、しっかり読ませるコラムなんかも充実してて、私も立派な愛読者です。

そんなフリーペーパーを集め、自由に読んでいいスペースがある。その名も「ファンシティライブラリー(FUN CITY LIBRARY)」。東京の新橋にて営業しているカフェ「カピスタ! 新橋」内で、昨年の8月頃よりこの図書館は開設されており、カフェのお客さんであれば誰でも自由に閲覧することが可能。

そして、ここに揃っているフリーペーパーが、全く見覚えのないモノばかり。それもそうだ。何しろ、この図書館では、海外で発行されているフリーペーパーばかりを集めているのだから。というものの、海外の発行物なのになぜか日本語。要するに、その土地に住む日本人に向けて発行された日本語のフリーペーパーのみを集めたライブラリーなのだ。

このライブラリーを開設したきっかけを、「ファンシティライブラリー」を運営するエアプラス株式会社に直接伺ってみた。
「海外各都市に存在する日本人向けフリーペーパーには、日本の情報誌などではなかなか手に入らない現地情報が多数掲載されています。海外に行く方は、出発前になると、これらの生情報を事前に手に入れたい衝動に駆られてきます。
が、残念なことにこれらのフリーペーパーは日本ではなかなか手に入れることができません」
そこで、このライブラリーが開設されたのだ。当然のごとく、これだけ多くの国の情報誌を一堂に集めたライブラリーは日本のどこへ行っても存在しない。まさに、日本で初のサービス!

ということで、海外旅行に行く暇も金銭もない私が「ファンシティライブラリー」に行ってきました。せめて、ここで憧れの海外の雰囲気だけでも味わいたい……。
訪れてみると、カフェ内の一角にズラっと並ぶ読み物たち。これを手に取ってみると、有益な情報がズラズラーっと網羅されてるっぽいのだが、よく見ると紹介されているオススメのお店の住所がハノイだったり、ニューヨークだったり、全然身近じゃない。当たり前だが、さすが異国のフリーペーパー。

海外のフリーペーパーには、大別して3種類があるそうだ。1つは「観光客向け」。2つ目は「駐在員・その家族向け」。最後に「留学生向け」の3タイプ。
『週刊NY生活』なるフリーペーパーは、まさに現地の駐在員向けのもの。
2010年2月6日号にはニューヨークで行われるロックミュージカル『黄金バット』(アメリカでの公演名は『GOLDEN BAT』)の記事や、日本で出版された新刊の紹介記事などが。パッと見、日本で発売されている新聞とほとんど変わらない構成となっている。

観光客向けのフリーペーパー『アビマガジン』は、バリのもの。飲食店やスパ、洋服屋、ホテルなどの生情報が満載! これらの情報をインプットしての旅と、知らないでの旅とでは、充実度も全く違うのでは。

他にも、駐在員の奥様向けのフリーペーパーなんてのもある。ベトナムの『Vietnam SKETCH』2月号では、「スーパー vs 市場 徹底比較」と題された特集ページが。ここには、両者で買い物する利点が挙げられており、「市場でいっぱい買い物すれば、おまけがついてくる」、「スーパーはどの時間も豊富な品揃え」とお互いが主張。いかにも主婦向けな内容となっている。
バンコクのフリーペーパー『WOM』には、奥様の相談に答えた「シルクカーペットのたたみ方」を解説したページが。要するに、読者の投稿を受け付けた企画ページの一種である。

現在、ライブラリーには30カ国、50誌のフリーペーパーが揃えられており、最新号が出るたびに日本に送付され、陳列されている。
在庫の傾向としては、アジアのフリーペーパーが充実している模様。
逆にヨーロッパのものは、日本人向けフリーペーパーの数が少ないため在庫の数も少ない。

このライブラリーがあるビルの4階には、エアプラス(株)の店舗カウンターがあり、そこでは配布可能なフリーペーパーや、一部のバックナンバーを提供してくれるサービスも実施中。提供不可なフリーペーパーの場合は、コピーのお願いだってできる。

このライブラリー、やはり海外生活の経験があったり、海外旅行好きな人の利用が多いらしい。だが、個人的には海外未経験者でも十分楽しめる印象を抱いた。何と言うか、海外の匂いを味わいに行くというか。
かつて「駅前留学」なんて言葉もあったが、ここでは海外旅行の雰囲気を満喫してみたい。実に、有意義な時間なんです。 (寺西ジャジューカ)
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