近年は、おとな向けの「ラブヒゲ危機一発」や、刺激的な振動を加えた「黒ひげ博士 ビリビリ危機一発」、100人の黒ひげが飛び出す「黒ひげ危機100発」など、遊び方も多様化しているが、そんな「黒ひげ危機一発」には大きな弱点があるのだという。
「国民の認知度は8~9割で、タルから飛び出すゲームだということはほとんどの方がご存知です。でも、実はキャラクター自身の“キャラ”が立ってないんです……」(タカラトミー カード・トイゲーム事業本部名和香織さん)
いやいや、あの黒いひげの顔、キャラが立っていないことはないでしょう、と言うと、
「タルから飛び出すことは知っていても、人形だけを見せて聞いてみると、わからないという人がけっこういらっしゃいます。実際、ウェブでキャラクターに関する印象などの定量調査をしたところ、キャラクターの認知度が低いことがわかりました」
そういえば、あのキャラクターの正式名称って、「黒ひげ」でいいんでしょうか?
「チーム内では『黒ひげくん』と呼ぶことが多いですが、パッケージには単に『黒ひげ人形』と書いてあります」
性別は当然「男」だが、年齢をはじめ、キャラクター設定は謎に包まれているそうだ。そういえば、キャラクタービジネスが盛んになった以降に誕生したものは、マイナーキャラ・ゆるキャラなどにもたいてい「誕生日」やら「好物」やらいろいろな設定があるのに、名前すら持っていないとは、少々意外な気もする。
「黒ひげは完全にモノ発なので、キャラが弱いんですよね。35周年では、キャラ・世界観を広げること、コンテンツ化するために詳細なプロフィールなども作らないと……と思っています」
ちなみに、昔はもっと大音量で、激しく飛び出した気がしたけれど、そのあたりは変化しているの?
「現在の玩具の安全基準は1995年施行の製造物責任法(PL法)にあわせたものとなっておりますが、当時のトミーもタカラも法施行以前、何年も前に先取りして独自の規定をしておりました。具体的には人形の飛び出し方や剣先など、お子様がケガをしないように細かい配慮の徹底をしております。黒ひげ危機一発に関して言いますと、75年当時のものと現在のものとでは、飛び出し方自体はそれほど差がありません」(名和さん)
ってことは、飛び出してくるインパクトの大きさが、記憶のなかでより増幅されてしまったということなのだろうか。
35年に渡って親しまれてきた黒ひげ危機一発。今後はキャラクター・世界観の広がりが期待できそうです。
(田幸和歌子)