恋愛において、相手にギャップを見せると効果があるという話をよく聞く。たとえば、「派手な外見なのに真面目」とか。
「草食系なのに頼もしい」とか。「コワモテなのに笑顔は可愛い」とか。「部活中は鬼のように厳しいのに練習が終わるとすごく優しい」とか。そのギャップにキュンとくる異性は多いといわれている。

実はこの“ギャップの法則”、人間に対してだけではなくヒット商品にもあてはまる。たとえば、流行まっただ中の“食べるラー油”は、「調味料なのに食材」というギャップがある。
通常のラー油にガーリックなどの塩味や食感のある具材をプラスしたことで、脇役から主役へ出世したのだ。

また、現在では定番のキャンディー“キシリクリスタル”は、「甘いのにひんやりする」というギャップをもっている。発売当時は、キャンディーといえば「甘い」か「ひんやりとしたクール感」かのどちらかひとつしか味わえなかったが、“キシリクリスタル”は、冷たいキシリトール層をほんのり甘いミントキャンディ層でサンド。これが、キャンディーに対する既成概念を超えてヒットにつながったのだ。

このようにギャップのある製品がヒットしている影には、人間の心理がはたらいているそうだ。行動心理学の専門家・目白大学の渋谷教授に聞いてみた。

「人は、モノやヒトにある程度の期待感をもって接します。その際、想像通りだと物足りなく感じるのですが、期待以上のよい裏切りを受けると、それが強い印象となって残ります。また、自分で食べてみようと思って買った製品が期待以上においしいと、肯定された気分になり、満足感につながってリピーターになるんです」

つまり、想像より“おいしい”と感じると、次からその製品を目にするだけで“おいしい”と感じたときの記憶がよみがえり、また食べたくなって購入するということ。今、ヒット商品にはギャップが求められているのだ。

ちなみに、“キシリクリスタル”が発売されたのは2001年。当時は、「甘いのにひんやり」というギャップがあったことと、食品業界ではタブーとされていた青緑色(青カビ色)のパッケージのため、いい反応は見られなかったんだとか。
ところが、口にした人の評判がまたたく間に広がって人気に火がつき、現在では袋入りキャンディナンバー1ブランドにまで成長したのだ。

恋愛においても食品の企画においても、“ギャップ忘れるべからず”ということである。
(渡邊詩織/プロップ・アイ)