写真を撮るときはみんなでアヒル口をしてキメポーズ……今や女子のたしなみ? となった感のあるアヒル口。鏡の前で試しにアヒル口をつくってみたところ、結構難しく、顔の筋肉が思わずつりそうになってしまった。
やっぱり、ギャルの皆さんはかわいく見えるアヒル口の練習とか日々してるんでしょうか?

アヒル口とは、ちょっと前なら鈴木あみ、最近だと上戸彩、広末涼子などに代表される口角がキュッと上がり、唇が突き出たドナルドダックのような口のかたちのこと。ライトノベル『涼宮ハルヒの憂鬱』のヒロイン、ハルヒもすねるとアヒル口になる、という設定になっている。今年出版された『みんな大好き!アヒル口』(マガジンハウス)はアヒル口をテーマにしたかわいく楽しいビジュアルブック……という感じだったが、もうすこし学術的な立場から検証してくれるのがこの本、『なぜアヒル口に惹かれるのか』(メディアファクトリー新書)だ。

本書に掲載されていた「アヒル口年表」によると、アヒル口のはしりは80年代、おニャン子クラブの「ゆうゆ」や酒井法子だったが、当時は「アヒル口」という概念そのものがまだ存在しなかった。ブレイクし出したのは、90年代に入りプリクラの「キメ顔撮影」が定着し出して以降のようだ。2005年には『現代用語の基礎知識』に「アヒル口」が初登場。挙げ句の果てに、2008年には『アヒル口しか愛せない』なるAVまで出ているのはビックリである。

著者はこの「アヒル口」に対する男子のフェティッシュな欲望を、「『好き』とも『つき合いたい』とも少し違う、『萌える』という感情」に特化して分析。「日本人は元々、萌えやすい性質をもっている」という見地から、アヒル口に惹かれる理由を脳科学からフロイトの口唇期リビドーにまでふれつつ、丁寧にわかりやすく解説してくれる。

版元に読者の反応など聞いてみたところ、「ライトな内容の本かと思って手にとってみたら、最新の脳科学や心理学の深い知識が得られて意外だった」などの感想が寄せられているらしい。

ところで、生まれつきの「天然アヒル」がもてはやされる一方で、そうでない女の子がキメ顔としてつくる「人工アヒル」に、世間はけっこう厳しいと思いません?? ネットでも「かわいい子がするのはいいが……」といった論調が見受けられるし、同性からは「男に媚びている」という軽蔑の目で見られてしまう。

と、こんなふうにそれぞれの立場によって、受け止め方が天と地ほども違う「アヒル口」。
でも考えれば、最近は『メガネ男子』『恋する男子パーツ』『カレセン』といった男性の鎖骨や血管といった身体の一部、あるいは属性に萌える女子向けの本もたくさん出ているので、お互いさまといったところだろうか。

また、個人的にはアヒル口には「かわいさ、幼さ」以外にも、どことなくファニーで、相手をホッとさせる癒し的な要素もあると思う。たとえそれが人工であっても、「私ってこんなバカみたいな顔もできる親しみやすい女だから、気軽に話し掛けてもいいのよ」みたいな感じというか。
現代のギャルが「かわいい」「エロい」のほかに、この「親しみやすさ」まで無意識に計算してアピールしているとしたら……と考えるとすごい。あなたはアヒル口、どう思います? それでもやっぱり、かわいいものはかわいいですか?(笑)
(まめこ)
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