パソコンで原稿を書くようになって久しいが、いまだ筆記具は欠かさず持ち歩いている。それは咄嗟にメモをとるとき、ペンで書くのがなんと言っても便利だからだ。
ペンをサッと上着から取り出して、ポケットティッシュの表紙の裏にでもメモることができる。このスピード感がたまらない。そこで今回は、改めて書きやすくて、疲れにくい重宝なペンを一本紹介したい。

と言ってはみたものの、近頃はケータイにメモ書きを入力している人も少なくないようだ。メールを打ち慣れているユーザーにとってはそのほうが合理的かつスピーディーなのかも。だが、そんな便利なデジタル機器にも弱点はある――電池切れだ。
だから咄嗟のときに確実に対応できるとなると、やはりペンと紙ということになる。

しかしあるとき、仕事で知り合った卸売り関係の業者から、「冷蔵庫の中ではボールペンは使い物になりません。だからいつも鉛筆を使っています」という話を聞いた。確かに冷蔵庫の中や極寒の地では、インクが凍ってしまい、うまく書けない恐れがある。という訳で筆者は以来、鉛筆の進化形であるシャープペンシルを筆記具の王様として認識している。

前置きが長くなったが、書きやすいシャープペンシルはないかと探してみたところ、最近見つけたのが『トリプラス 776』。
ちなみに、このシャープペンシル、知る人ぞ知るドイツの老舗筆記具メーカーのステッドラー社製であり、世界の優れたデザイン製品に贈られる『レッドドット・デザイン賞2009』を受賞している。

特徴は、よく見れば誰でも分かるのだが、軸の形が三角形なこと。ふつう、ペンの軸は丸型が圧倒的だと思うが、どういう訳で三角形なのか。説明には「人間工学に基づいた三角形状の軸は手によく馴染む、握りやすいデザインです」とある。実際に持ってみて「なるほど」と思った。

ペンは親指、人差し指、中指の3本で持つのだが、これら3本を合わせると三角形の空間ができる。
この空間に三角形軸がピッタリ合うわけだ。丸軸だとどうしても指の中で動きやすいし、鉛筆の六角形軸でもあまり安定しない。結局、三角形のほうが指の中で遊びが少なく、手に馴染みやすいということ。また、軸には滑りにくい素材を使用しているため、グリップ感が一層向上している。

書き心地を試してみると、軽い筆圧でしっかりとした文字がサラサラと書けるという感じ。ふだん使っている丸軸のシャープペンシルと比べて、その違いは歴然。
丸軸はどうしても指に力が入りすぎてしまうのに対し、三角形軸は弱い力でも安定する。わずか7.5グラムという軽さも相まって、とても軽やかな筆運びを味わえた。

『トリプラス 776』のおかげでシャープペンシルの書きやすさを再認識した。これからも、さらに書きやすいペンを探してみたい。
(羽石竜示)