そんなバカ高校生の私をコンコンと説教してやりたくなったのは、この会社の存在を知ってしまったから。東京にある「株式会社ノーブル・エイペックス」を起ち上げたのは、若干18歳の高校3年生の女の子なのだ。
社長の名前は、大関綾さん。画像【下】の通りの若々しさだが、今までの人生を振り返るとこの立ち位置は必然。
家にあったパソコンを遊びでイジりながらillustrator(イラストレーター)の技術を習得した綾さんが、親戚の会社の映像処理担当としてアルバイトを始めたのは小学4年生の時。納期に関してもクオリティに関してもシビアなハードルが設けられ、それらを見事にクリアしてみせた。
そんな彼女が「会社を起ち上げたい!」と宣言したのが中学3年生の頃。しかし、思いばかりが先行しているわけではないのか? 試練として、家族は中小企業経営者が参加するコンクール「かながわビジネスオーディション」の存在を教えてみた。
当然、参加した綾さんはコンクールで自分なりのプレゼンを披露。結果、2つの賞を受賞するという快挙を達成!
「実は才能あるんじゃない?」と彼女の資質を認めた家族は、彼女をバックアップすることにした。力で周囲を認めさせたのだ。
そこからの彼女の行動力は、特筆もの。
まず都内の私立高校に入学するも、立ちはだかったのは校則の壁。学校と交渉を繰り返したが、「在学中の起業は認められない」という判断が下されてしまう。
そこで、都内の教育委員会に問い合わせてみる。すると、「公立なら会社設立を禁じていない学校も存在する」という情報をゲット! そこから、彼女は本当に私立高校を希望退学し、起業が許される高校を受験し直した。
そして、2010年1月に設立された同社。その第1弾商品として8月1日より発売されているのが、『ノーブル・タイ』(12,000~50,000円)である。
これは、男性が胸元のオシャレをできる新感覚のネクタイ。すべて本革製で、フロント部分にはアクセサリーをつけることができる。見ての通り、サイズはコンパクトだ。
なんと、綾さんがこの商品を考案したのは中学3年の時だという。
「男性はどうしてあのような首から腰までの長い生地をぶら下げているのだろう?」
という思いから開発がスタートされ、ブラッシュアップには3年の月日をかけた。
反響も上々で、現在は1日で10本ほどを売り上げているという。
ただ、この『ノーブル・タイ』は自社ですべてを製作。よって、なかなか生産が追いつかない状態。また、別の問題も浮上している。彼女は、受験生なのだ……。
元々は彼女が受注分を製作していたが、受験も間近になった10月からは別スタッフが製作を担当中。だが人手と材料の問題で、今はかなりの品薄状態。経営者としては、嬉しい悲鳴なのだろうが……。
そんな同社にとって、『ノーブル・タイ』は自信作。「新しいファッションの提案です!」という言葉も力強い。
そして、来春には東京モード学園でイベントが開催されるという。内容についてはまだ未定なのだが、「ノーブル・タイに合う髪型」「ノーブル・タイに合うTPO」を募集してのファッションコンテストの開催が検討されている。
そして、彼女の視線はもっと遠くを見つめている。
これはただの先走りではなく、マーケティングを経ての勝算アリの展望。既に5ヶ国語のホームページも企画中だというから、彼女らしい行動力じゃないか。
その上、他の商品の構想もすでに出来上がっている。社長の自宅内にある工房では、今までに多くの発明品が誕生されてきた。今後は、『ノーブル・タイ』で得た利益をつぎ込んでの次作発表、という矢継ぎ早な展開が予定されている。
昔からの常套句で「最近の若い者は……」というボヤキがあるが、最近の若い者の中には綾社長のような人もいるのだ。年長者と言えども、ちっともウカウカしてられない。
(寺西ジャジューカ)