子どもの頃、いつも早起きの母親を見て、「自分も母親になったら自然に早く目が覚めるんだろう」と思っていた。

ところがどっこい。
今も毎朝、目覚まし時計との戦いを30分くらい繰り返す惨状である。

だが、「早起きの母」も、ときどきこんな話をすることがある。
「結婚したばかりの頃、起きる時間が遅くて義母に注意されたことがある」
この「遅く起きて」というのは、せいぜい朝6時頃。つまり、祖母は4~5時に当たり前に起きていた……というのだから、ますます寝坊の自分などは赤面せざるを得ない。

とはいえ、起床時刻について周囲に聞いてみると、朝4~5時台なんて人はいま、そう多くないようにも思う。
昔に比べ、お母さんたちは寝坊になっているのだろうか。ロフテー快眠スタジオの睡眠改善インストラクター・矢部亜由美さんに聞いた。

「生活習慣の変化で、いまは夜寝る時間も遅くなっていますし、昔のほうが、お母さんの起床時刻に対する意識は強かったかもしれません。でも、日本人の睡眠時間そのものはここ30年ほどの間にどんどん短くなっていて、なかでも最も睡眠時間が短いのは40代女性なんですよ」
「NHK放送文化研究所」が行った国民生活時間調査の結果によると、1995年時に睡眠時間が最も少なかったのは40代女性で、平日の睡眠時間は6時間53分。
2000年時でも最短は40代女性で6時間47分。2005年には、さらに短く6時間43分となっている。
働き蜂といわれる男性でも、2005年時の睡眠時間(平日)は30代~50代で7時間4分~7時間9分だったのを見ると、実は女性のほうが眠っていないのだ。

「家事の時間は昔より減っているといわれますが、その分、お母さん自身仕事をしている人も増えていますし、介護などもあったりと、するべきことは増えているんですよね」

また、女性の場合、女性ホルモンの影響で睡眠の質が低下しやすい傾向もあるという。
「生理が始まってから次の排卵までの時期には、エストロゲンの分泌が増え、身体も心も眠りも安定しますが、排卵を境に次の生理がくるまでの黄体期は、プロゲステロンの分泌が増え、その変動によっては体調が一時的に不安定になることがあります。また、プロゲステロンには睡眠作用があるので、黄体期などは眠くなりやすいと言われていますが、基礎体温が高くなるため、夜になっても深部体温が低下しないことで寝付きにくくなったりすることもあるんですよ」

ちなみに、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ホーム・エンターテイメントが、2008年にフランス、イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン、日本など17か国の“睡眠事情”に関する調査を実施した結果もある。
この調査によると、起床時間は17か国の平均が6時50分であるのに対し、日本の起床時間は6時32分。
17カ国の平均睡就寝時間は23時35分であるのに対し、日本は就寝時間が0時16分。
さらに17カ国の平均睡眠時間が7時間であるのに対し、日本は最短で6.4時間。
日本は「宵っ張りで早起き」のうえ、睡眠時間が短いという傾向が明らかになっていた。

睡眠時間の少ない日本人の中でも、特に眠りが不足している「睡眠弱者」と言われる40代女性を中心とした女性たち。
起床時刻そのものは昔に比べ、おそらく遅くなっているだろう。昼のうたた寝に罪悪感を持つ女性もいるだろうけれど、慢性的に睡眠時間が不足しているお母さんたちにとって、眠りを補うことは重要なのでした。
(田幸和歌子)
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