ちょうど携帯電話に電子メールサービスがつき始めた10年ほど前、まだ学生だった筆者は、当時付き合っていた彼女と交際を始めたときの日付をメールアドレスに入れていたという、恥ずかしい過去を持っている。

しかも、彼女と別れた後もしばらくそれを使い続けており、誰かに説明を求められた際には「実家で飼っているペットの生年月日だ」という無茶な理由を後付けしていたものである。


先日、携帯電話のアドレス帳を整理していたところ、今となっては「えっ」と思うようなメールアドレスが結構あった。特に学生時代に作ったメールアドレスには、思わずはにかんでしまうようなメールアドレスが多いようである。

最も目を引いたのが、当時の彼氏または彼女に関係するテキストが入っているもの。ここではこのようなメールアドレスを、「恋愛系アドレス」と定義したい。筆者の昔の携帯メールアドレスもこれに属するといえる。最も直接的かつ情熱的なものだと、「○○loves○○」といった感じの文章がそのままアドレスになっているものがある。
ここまで露骨でなくても、さりげなく相手の名前がアドレスの中に混じっているケースもある。フリーメールアドレスでも、「iloveナントカ」というアドレスはほとんどが取得済みになっており、その人気の高さが伺える。

それ以外には、当時ハマっていたもの、好きだったものがアドレスに入っているケースもある。これらのアドレスは「趣味系アドレス」と総称することができるだろう。筆者のアドレス帳からは、『うどん』『ロックンロール』といったテキストのほか、「車のフロアマットメーカーの名前」「ハーレーダビッドソンの排気量の数字」などかなりマニアックなテキスト入りのアドレスが確認された。このアドレスに試しにメールを送ってみたところ、少なくともハーレーの排気量入りアドレスは現在も使われていることが明らかになった。


当時のニックネームがアドレスに使われている「あだ名系アドレス」も意外に多い。これらのアドレスは、そのニックネームがまだ現役であれば問題ないが、時代が変わればニックネームも変わるため、使いづらくなってくることが予想される。あだ名系アドレスを持っている男性の知人に聞いてみたところ、「結構かわいい感じのあだ名だったので、今はかなり気恥ずかしいんだけど、変更が面倒で今も使っている」とのことであった。

これらのアドレスは、すでに使われていないものもあれば、まだ現役バリバリで使われているものもある。変更しない理由としては、先の男性も言っていたように「面倒くさい」という理由が大半を占めるようだ。例外的に、恋愛系アドレスは使われていないことが多いようである。


ちなみに、当時の彼女の名前が入った恋愛系アドレスを使っていた筆者の知人は、その彼女と別れたときにアドレスも変更したが、数年後に再びつき合うことになり、ついに結婚したのだそうだ。今は無きメールアドレスも、携帯メモリの中で静かに祝福していることであろう。
(珍満軒/studio woofoo)