だが、トシとともに年々、夏へのテンションはダダ下がる一方で、「あぢ~~」「寝苦じ~」「また蚊に刺されたよ、しかも私だけ!! ちっ(舌打ち)」などなど、悲しいくらいネガティブワードが続々噴出するようになってしまったのは、私だけだろうか。
思えば、無邪気さを失う一方で、ネガティブな思考だけは惜しみなく手に入れてきた。
そんな自分が、失ってしまった眩しさを見つけ、ドキッとさせられたCMがある。
ブルーのノースリーブワンピの裾を揺らし、可愛いバッグを携え、海辺をスキップするキティちゃん。蚊に刺され、ポケムヒを塗った後、笑顔で大きくジャンプ♪ バックにはこんな曲が流れる。
「ポケムヒ持ってどこ行く? 最高の夏にしよう 虫に刺された数だけ思い出になる フー!」
ああ、なんてポジティブなんでしょう。スゴイよ、キティちゃん。
蚊に刺されることって、蚊に刺されやすい体質の人にとっては特に、ものすごーく嫌なこと。自分などは虫よけスプレーをきっちり使い、わざわざ遠回りまでして蚊の出やすい街路樹の多いルート・公園を通るルートを避けて行動するほどなのに、それでも数分間で数カ所刺される。蚊はもう、にっくき存在以外の何者でもない。
なのに、それを「虫に刺された数だけ思い出になる」なんてとらえ方ができるなんて……。もはや煩悩を捨てた、悟りに近い境地ではないだろうか。
これって、どういう発想から生まれたの? 池田模範堂・市場開発室のポケムヒ担当者に聞いてみた。
「このCMは、虫に刺されることも、夏の思い出の1つにとらえてほしいなという思いから、企画しました。ポケムヒは携帯してもらう用に作った商品で、夏はキャンプに行ったり、花火に行ったり、せっかく面白いことがたくさんあるので、女の子たちの夏の楽しい思い出を少しでも応援しようというコンセプトで考えました」(担当者)
池田模範堂では、「ムシペール」など、虫よけ商品も出しているわけだけど、「虫=嫌なもの」という立場と、「虫に刺されるのも思い出♪」という立場と、板挟みにならないのでしょうか。
「もちろん会社としては、事前に虫よけなどもフルラインナップでお使いいただきたいですが、すべての虫を防ぎきれるかというと、それは難しいですよね? あくまでできるだけ防ぎつつ、せっかく楽しいイベントも多いので、外に出ておもいっきり楽しんでほしい。そのお手伝いをしたい、と思っております」
ところで、イヤ~な虫刺されを「思い出」ととらえられる発想って、ネガティブな人からはなかなか生まれそうにない。
担当さんもやっぱり夏が大好きなんでしょうか?
「もちろん大好きです! だって、楽しいイベントばっかりじゃないですか!」
年々、嫌いなことばかりが増える自分には、目が覚めるような斬新なCMです。
(田幸和歌子)