実は、私には空白期間がある。数年前、某会社を退職して5か月ほど家からほとんど外出しなかった時期があるのだ。
テレビを観て、ご飯を食べて、本を読んで、CDを聴いて……。外出もしていなかった。寝る時間だって無茶苦茶。寝て起きたら夜の9時だった、なんてことも珍しくなく。
正直、あの頃の自分は沈んでいたと思う。人とも数えるほどしか接触していなかった。


だが、ネガティブに考え過ぎるのもいかがなものか。会社に所属していないからこそ、新たな可能性を探るための貴重な時間になり得るわけで。
そして、ふと気持ちが沈んでしまったとき。このイベントに参加してみてほしい。今年の2月を皮切りに、今までで4回の開催を重ねているイベント。その名も『無職フェス』である。


同イベントを起ち上げたきっかけについて、実行委員会代表の岩井さんに話を伺ってみた。
「去年の12月に、私自身が失業しました。無職となると社会から孤立してしまいがちになります。そこで、セーフティネットのようなものを起ち上げたかったんです」
“無縁社会”などが問題になっている、この昨今。失業者が自宅で餓死をしたという報道を目にした岩井さんが危機感を抱き、「無職の間で“絆”を作っていこう!」と、このイベントを思い立ったのだ。

実はこの『無職フェス』の内容が、充実しまくりなのだ。

「音楽のライブやトークライブ、他にも勉強したり楽しんだり、励まし合ったり愚痴を言い合ったりしています(笑)」(岩井さん)
例えば、第2回では現役のホームレスの方を囲んでのトークタイムが設けられた。第3回では飲食店やライブハウスの経営者を呼んで話を聞き、みんなで勉強をした。

そして10月15日に開催された第4回の内容が、また盛りだくさん! マジックショーあり、音楽ライブあり、ダンスショーあり……。もちろん、シリアスなプログラムも設けられている。世田谷区の区議会議員による講演。そして、誕生学アドバイザーによる講座「いくつになったって生まれてきてくれてありがとう。
なお話」も、参加者の糧になっているはず。

このクオリティの高さには、理由がある。イベント開催の目的の一つとして挙げられるのは「お金がなくても楽しめる場所をつくりたい」という岩井さんの思い。何しろ、第4回の会費は、500円だったのだ。
こうなると、不安な面も……。採算は取れているのか? この豪華なゲストが顔を揃えた内容でありながら、こんな入場料でいいの!?
「皆さん、破格のギャランティで出演していただいております。
交通費のみで来てくださったり、中にはノーギャラで出演していただけた方もいます」(岩井さん)
『無職フェス』の趣旨に賛同し、皆さんが力を貸してくれているという。

では、このイベントにはどういう人達が来場しているのだろう? 
「20~30代の方が多いです。中には50代の無職の方も来てくれました」(岩井さん)
実際、落ち込んだ様子の方はほとんどいない。大半は、イベントのプログラム内容に魅かれてくる方ばかりのようだ。

そして、興味深いエピソードも。実は、第4回にはハローワークの職員の方(30代男性)が来場してくれたのだ。

「ご本人も、今の職に悩みを抱えていたようです。ただ、このイベントに来て『続けるかどうか考えていたが、頑張ってみようと思う!』と仰っていました」(岩井さん)
『無職フェス』が、この人の考え方に影響を与えたのかもしれない。他にも「今は先が見えないけど、こういう場所に来れて良かった」という反響が寄せられている。

ちなみに、第5回は2月10日(ニートの日)に下北沢での開催を狙っているとのこと。イベントは、これからも回を重ねていく。
「“無職”というと良くないイメージがありますが、次のステップに進むための前向きな期間であるというイメージを広めていきたいです」(岩井さん)
確かに! アントニオ猪木が「ピンチの時は、チャンスである」と言っていたが、この貴重な時間に己をブラッシュアップさせなきゃ勿体無い。

とにかく、籠っているのが一番良くないと思うのだ。『無職フェス』へ足を運べば、士気が上がるかもしれません。
(寺西ジャジューカ)