5日、パリ・バゲットコンクールが開かれ、市内18区にあるパン屋、セバスチャン・モウヴューが今年度のグランプリに輝いた。バゲットコンクールとは、どこのパン屋のバゲット(棒状の堅焼きフランスパン)が最もおいしいかを決める催しのこと。
バゲットの中でも「トラディション」という種類を対象に審査される。今回で18回を迎えた同コンクールは、パリに1220軒あるパン屋の中から168軒がエントリーした。1位のパン屋には4000ユーロの賞金と大統領官邸エリゼ宮に1年間パンを納品できる権利が与えられる。

トラディションの製造方法は、デクレと呼ばれるフランスの行政命令(日本でいう政令)により規定されており、小麦粉、水、イースト、塩のみで作られる。添加物はソラマメ粉2%、大豆粉0.5%、小麦麦芽粉0.3%の範囲であれば許される。なお、コンクールでは各バゲットの長さが55〜65cm、重さが250〜300gの間で定められている。

グランプリを獲得した店のバゲットはどのような味なのだろうか? 早速訪れてみた。

1位の店、セバスチャン・モウヴューは市内北部18区にある。この辺りはパリでも庶民的な地域。店内の雰囲気も親しみやすさが漂う。地域の人気店らしく客もひっきりなしに入っていた。店に到着した時は、すでにトラディションは売り切れていて、次のものが出来上がるまで30分ほど待たねばならなかった。


さてバゲットの味はというと、外皮の香ばしさとは対照的に、中はふんわりもっちりとした絶妙の弾力が特徴的。噛んだ時に舌の上でにじむバゲット特有のうま味と、それら食感が見事に調和している。バゲットと一口に言っても、それぞれの店舗によってかなり味は変わる。そのため個人で好き不好きが分かれる場合も多い。しかし実際2位から5位までの店も訪れてトラディションを食べてみたが、この店のものはそれらの中で比べても特に印象的だった。もちろん2位以下も実力派ぞろいだ。2位のラウル・マデールは2002年に同コンクール1位を獲得、5位のアルノー・デルモンテルも2007年に1位に選ばれている。

至るところにパン屋が林立するパリはパンの激戦地。バゲットコンクールに参加していない店舗でも、おいしいところは多い。舌の肥えた客と、各店舗の試行錯誤から、日々おいしいパンが生み出されているのだ。
(加藤亨延)

今回入賞したパン屋(1〜5位)

(1)Sebastien MAUVIEUX(セバスチャン・モウヴュー)
159 rue Ordener 75018 PARIS

(2)Raoul MAEDER(ラウル・マデール)
111 boulevard Haussmann 75008 PARIS

(3)Alexandre CHAUVIN(アレクサンドル・ショーヴァン)
boulangerie AUDOU, 10 rue de Chanzy 75011 PARIS

(4)Dominique ANRACT(ドミニク・アンラク)
110 rue de la Tour 75116 PARIS

(5)Arnaud DELMONTEL(アルノー・デルモンテル)
39 rue des Martyrs 75009 PARIS
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