読者の皆さんは、子供の頃にどんなオモチャを欲しがっただろうか。「男の子」だった男性諸氏は、戦隊モノや仮面ライダー、ウルトラマン、あるいはクルマや電車といったオモチャが多かったのでは? 「女の子」だった女性の方々は、リカちゃん人形やバービー人形といった人形モノ、ぬいぐるみ、おままごとセット、といったあたりではないだろうか。


男の子と女の子では、好むオモチャや遊び方などに明らかな違いがある。世の中の子供たちを見ていると、その違いはどうやら幼児、いや、乳児の頃からすでに存在しているように思われる。今回は、この男女が持つ好みの差について追ってみたい。

取材をしたのは鎌倉の、とある保育園の園長先生。常日頃から小さな子供たちを目の当たりにし、接している、いわば“子供の専門家”だ。話を聞いてみると、いきなり驚かされた。
園長曰く、「男の子と女の子の脳は、産まれる前から違うものという医学データがあります」とのこと。脳の構造が異なるために、考え方や情報処理の仕方、反応なども男女間で異なってくるのだという。体つきだけでなく、脳にも男女で違いがあるとは。

「男の子は、お絵かきをしていても、線をぐるぐる描きながら、『ガタンガタン』などと、電車の音を口ずさむことが良くあります。これは、電車の絵を描いているのではなく、電車が走っている状態を描いています。このように、男の子は物の動きを表現したり、自分が動いて表現するといった、“動き”に関して強い興味を示します」と園長。


この“動き”の興味が、自然と追いかけっこや戦いごっこへと移り変わっていくのが、男の子の特徴だという。「男の子は“動き”に対する興味から、街中を動くクルマや電車などを好むようになります。その後、追いかけっこや戦いごっこを楽しむようになることで、仮面ライダーやウルトラマンといったヒーロー物を好きになると考えられています」と園長は話してくれた。

では、女の子の好みはどのように形成されていくのか。園長によると、「男の子と同様に、女の子も小さい頃のお絵かきから、その好みに関する特徴が見えてきます」。お絵かきで線を描く中で、女の子は様々な色を用いるという。
そして女の子の描く線は、“動き”を表現する男の子とは違い、家族や花といった“実体・実像”を表しているらしい。ここから、女の子の興味の対象が“動き”ではなく“(実体・実像を表す)色”にあることが見えてくる。

「おはじきやブロック遊びなどをしていても、女の子は自然と色集めに夢中になります。ここから、かわいいもの、キレイなものに対する女の子ならではの好みが形作られていくのではないでしょうか」と園長は話してくれた。なるほど。だから女の子は、かわいい人形やぬいぐるみ、キレイな花や服を好きになるということか。


また、おままごとやお母さんごっこを好んだり、自分よりも小さい子や人形のお世話をしてかわいがるのは、母性によるものと考えられるという。幼い女の子の心の中にも、しっかりと母性が存在するとは、これまた驚きである。

「もちろん、おとなしくて優しい男の子もいれば、活発で行動的な女の子も多くいます。性差のみで行動が完全に異なる、とは言い切れないでしょう。家族や友人、保育園児なら保育士なども含めて、関わる人たちや環境によっても、子供の脳は変わっていくといわれています。それによって、好みも当然変わっていきます。
男の子でも女の子でも、大切なのはその子らしさを尊重してあげることではないでしょうか」と最後に園長は話してくれた。
(木村吉貴/studio woofoo)