「当館では年間、約110ヵ国からお客様をお迎えしています。特にサクラホステル浅草の場合、20代前半を中心とした学生が多いです。繁忙期は、桜の時期の3〜4月と夏休みの7〜8月。国別で見ると米国、英国、フランスからのお客様が多くを占めます。アジアだと中国、韓国は少なくマレーシア、タイ、シンガポールの比率が高い傾向にあります。東日本大震災や福島原発騒動で、一時期は特にフランスからのお客様が減りましたが、最近は戻りつつあります。一方でサクラホテル池袋の場合、池袋という地名がアジア圏で知られているらしく、中国やシンガポールなどの中国語文化圏、もしくはタイからのお客様が多いです」(ホテル担当者)
宿泊客の国籍が多岐に渡るため、文化・慣習の違いに配慮することも多いという。
「まず食事に気をつけます。例えばイスラム教圏からのお客様が多い日は豚肉をメニューから外したり、ヒンドゥー教圏からの場合は菜食主義者が多いのでベジタリアン・メニューにします。日本のマナーと各国のマナーが違う場合も多いので、その都度説明もします。スタッフは元バックパッカーや留学経験者で全員英語は話せ、英語以外の外国語が話せる従業員や外国人スタッフもいます。それでもお客様によっては言葉が通じない場合もあるので、その時は身振り手振りで伝えます」(同)
東京を訪れる外国人観光客は、どのような場所に興味を持っているだろうか。
「渋谷、原宿、築地、六本木、秋葉原、新宿、お台場が外国人観光客の訪れる定番スポットです。少々遠出をして鎌倉、箱根、日光、富士山を見るために河口湖へ向かわれる方もいます。スカイツリーは当館から徒歩圏内ですが、まだあまり知られておらず、東京タワーの問い合わせが多いです」(同)
変わり種としてこんな話もあった。外国人にとっては日本のラブホテルは珍しく、泊まってみたいと言われることもあるそうだ。予約を頼まれたり、同性2名でも大丈夫かとたずねられることもあるという。
4〜5年前から浅草という地域は、外国人バックパッカーのたまり場の一つになった。現在ではサクラホステル浅草以外にも、ドミトリーを備えた同形態の外国人向け宿泊施設が近辺に建ち、外国人旅行者が宿を求め目指す地区の一つになっている。
「2006年の開業以前、ドミトリー・タイプの外国人向け宿泊施設は、東京にほとんどありませんでした。これが当館をはじめる一つの動機になりました。オープン当初は、お客様はほぼ外国人でしたが、最近は日本人のお客様も増えています。しかし日本人、外国人という枠組みでとらえるのではなく、自然と両者の交流が進むような雰囲気の宿を作っていきたいです」(同)
日本にもっとホステル文化を築きたいと考えたことも、サクラホテルをオープンするきっかけだったそうだ。ただでさえ不安の多い異国の地で安心できるスタッフの気づかいこそ、外国人客が多い理由。宿という媒体を通して、草の根からの国際交流が日々ここでは生まれている。
(加藤亨延)