初対面の“同級生”と学校生活を懐かしむ「架空同窓会」がエモい
初対面の人同士による、架空同窓会


9月上旬、都内にて実在しない学校の同窓会が開催され、まったく面識のない人たちが楽しい時間を過ごしました。……こう書くとおかしいと思われそうですが、奇妙なイベントにも関わらず、異様に盛り上がったのでした。

開催の経緯と参加者のノリのよい反応


初対面の“同級生”と学校生活を懐かしむ「架空同窓会」がエモい
「双子のライオン堂」店主の竹田さん


発案者は赤坂にある書店「双子のライオン堂」店主の竹田さん。といっても、Twitterで「空想(架空)同窓会とかやりたい。全員同級生という設定で。好き好きに話していくだけ」とつぶやいてただけ(笑)。



その投げられたボールを受け止めたのが筆者。即興演劇とか結婚式ごっことかやりたいけど、気軽さに欠けるよなぁと悩んでいたところでした。「同窓会」というキーワードのゆるさやドラマチックなエモさに惹かれて、一気に開催を決意。

「双子のライオン堂」内には読書会やイベントが行われるギャラリースペースがあります。飲食も用意してもらい、場所などの問題はなし。むしろ気がかりは幹事役となる筆者も竹田さんも、“本当の同窓会の出席経験が皆無”ということ(笑)。

ここで支えになったのが告知を流した後の反応。「面白そう」、「行きたい」などのコメントに加え、「行けない代わりにビデオ出演したい」との申し出もあり事前撮影も実施。そして、一番ビックリしたのが……突然届いた欠席予定のメール。しかも、自作の校歌メロディが添付されているという粋な内容。もう、架空同窓会の世界に入り込んでる!

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欠席予定のメール(校歌添付)


架空同窓会スタート。話が止まらない!


初対面の“同級生”と学校生活を懐かしむ「架空同窓会」がエモい
会場となる本屋、双子のライオン堂

初対面の“同級生”と学校生活を懐かしむ「架空同窓会」がエモい
本屋さんの奥が、架空同窓会の会場


架空同窓会当日は10名が参加。同会場では直前まで「架空読書会」というイベント(参考:実在しない本について語り合う「架空読書会」をやってみた! https://www.excite.co.jp/News/bit/E1500049381134.html)もあり、連続して参加したかたもいましたが、それ以外は全員初対面。開始前に説明も行いましたが、「久しぶり~」という挨拶も一部ではいきなり飛びだしていました。

初対面の“同級生”と学校生活を懐かしむ「架空同窓会」がエモい
開始前の説明タイム


最大のルールは、語った思い出はすべて真実となり聞いた人も受け入れるということ。矛盾が生じたら「記憶違い」で誤魔化してOK。学校の設定も、幼小中高一貫校(どの年代の人が来ても対応できる)の”しし校” (店名のライオン=獅子にちなんで)と決めたほかは用意せず。

以上を伝え、いよいよ乾杯でスタート!

初対面の“同級生”と学校生活を懐かしむ「架空同窓会」がエモい
乾杯して軽食をつまみながらトーク


まず順番に自己紹介。甲子園で優勝したエースや帰宅部、さらには小学校で転校しちゃった人までいて、そのたびに懐かしいという声があがります(もちろん初耳のことばかりですが)。演劇部や合唱部の舞台を見に行った、クイズ研究会は落研と部室が隣同士だったなど情報が混ざる発言も出てきて、思い出に深みがうまれます。

さらに、ウーパールーパーを飼育、校庭の遊具は全撤去され今は年々増えるタイヤのみなど、新たな情報も出現。どうやらギャグマンガっぽい雰囲気の学校だった(風になっていく)ようです。


同窓会ならではのコーナーで思い出が膨らむ


同窓会なので、思い出を振り返るコーナーも用意。まずは当時のアルバムを見て語るコーナー。イジワルな幹事が用意した懐かしの写真(実際はフリー素材サイトから適当に抽出)は変なものも多く、後から大喜利の「写真で一言」ぽかったという感想もでましたが、さまざまな思い出が浮かびます。

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懐かしの写真(架空)を見て語る


“しし校”は二宮金次郎像が無数にあり、超オンボロ校舎は安藤忠雄がデザイン。学園祭は72時間ぶっ通しで先生が校庭をマラソンさせられる行事が名物とのこと。うんうん、そうだったそうだった(ということにしなくてはいけない)。

そして、思い出のビデオレター。

初対面の“同級生”と学校生活を懐かしむ「架空同窓会」がエモい
恩師(架空)からのビデオレター


恩師の兎谷先生(という設定の見たこともない人)の登場に歓声があがります。ビデオ越しに、顧問だった「鳥人間同好会」など新たな話が語られます。

上映後は先生の思い出の話題に。兎柄のネクタイをしていた、時計持って穴に落ちてた(アリス?)などに加え、学園祭で72時間マラソンさせられてたのが兎谷先生だったと、これまでの思い出とのリンクも生まれました。

他にもタイムカプセル開封で当時埋めた(としてその場で勝手に渡された)ものを懐かしむなど、同窓会定番のイベントも実施。

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思い出がつまったタイムカプセル(架空)


クライマックスは校歌。どこまで歌詞を覚えているかクイズとして、メロディが流れる中、各自一行ずつ歌詞をつなげていきます。

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みんなの力で思い出した、しし校の校歌(架空)


♪我らの金次郎をタイヤと愛でる~
と、これまでの思い出を振り返る言葉が詰まった歌詞となりました(正直そうなるとは想定していなかったです!)。

同窓会の二次会(と称しての反省会)


約2時間の同窓会終了後は二次会……と称して、架空モードはいったん終了。あの発言はこういう意図だったなどの振り返りトークが行われました。

恩師VTRや校歌メロディは、自主的な協力者がいたという裏話には称賛の声があがります。また、学校自体の生徒数や所在地などの設定は、ある程度あったほうが発言しやすいという指摘もありました。

そのほか、「架空同窓会は、リアル同窓会にある人間関係の煩わしさがなく楽しい」、「演劇のようだが演者・脚本家・観客全ての要素があり似て非なる」といった哲学的な部分もあれこれ語りあい、こちらも2時間近くのトークの場に。まるで学園祭の会議をしている楽しさがありました。

初対面の“同級生”と学校生活を懐かしむ「架空同窓会」がエモい
架空同窓会の看板


この架空同窓会の参加動機を聞くと、なんか気になった、面白そうといった回答がありました。中でも「ただ楽しくウソをつきたかっただけです」という意見が、ものすごく象徴的な感じがしました。

こうして振り返るだけでも、“しし校”での思い出がまだまだ色々浮かんできています。ぜひ、まだ会ってない同窓生とも、思い出を語りたい(騙りたい?)ですね!

(高柳優/イベニア)