美味しいビールやワインが安く飲めるドイツ。ところで、そのドイツでの飲酒事情はどうなっているのだろう。
酒に関するドイツと日本の違いはいろいろあろうが、今回はドイツの飲み屋の状況と「未成年の飲酒」に着目してみた。

「酒は百薬の長」とはいうものの、飲みすぎれば毒に過ぎない。ドイツの全人口8300万人のうち、アル中と見なされているのは130~250万人だそうである(2010年ドイツ連邦統計局)。ちなみに日本では80万人以上。ドイツのビール、ワインは安いことで知られ、スーパーで500ミリリットル・24本入りの箱がなんと1000円から売っている。日本の6分の1くらい。ワインも200円からあり、こんなに安いとついつい飲みすぎてアル中になりそうだ。

飲み屋はどうなっているのか。ドイツの各市町村には「Kneipe」という飲み屋が数え切れないほど沢山あるが、おつまみを置いていない所が多く、
「あってもチップスやピーナツとかくらいですよ」と地元ドイツ人。
以前コネタで紹介したようにドイツ人は結構ケチなので、無料でチップスなどが置いてあるとすぐなくなる(食べられる)ため、サービスで出してくれる店は少ないのが現実。他方、有料メニューでは、ドイツ式の冷たいハンバーグ(ぺちゃんこの肉団子)やドイツ式のサンド(ロールパンで)。結局、日本の居酒屋のような数多くの美味しい料理を食べられるような飲み屋はない。
「食べずに飲み続ける」、日本人の感覚からすると体に悪そう。

さて、ここからが本題。未成年の飲酒だ。
「私の若い頃は、平気で村の飲み屋でビールもジンもウイスキーも飲んでいましたよ」とあるドイツ人中年男性。ビールとワインは16歳から、その他のアルコール度数の高い酒は18歳からでないと飲めないように法律に定められている。ドイツでの成人年齢は18歳。つまりはアルコール度数の低い酒なら未成年から飲める。これは羨ましいというべきか、それとも危ういというべきか。

で、厳しくなった法律の抜け道として、16~18歳の未成年者をターゲットに最近いくつかの新しいドリンクが市場に登場した。ウイスキー、ジン、ウオッカなどの混合酒で、度数はワインくらい。値段は200~1000円。だが、16歳以上かどうかチェックするために飲み屋の入り口で身元証明証の提示を求められるわけでもないので、14、15歳の人達もふつうに飲み屋やディスコとかに入っちゃうケースが多い。
これは社会問題。

そのようなソフトアルコールドリンクなどを未成年に大量に飲ませ、多くのトラブルを起こしたことで数年前から問題になって部分的に禁止になったのが「Flatrate Saufen」である。「Flatrate」(英語からの外来語)は携帯電話の世界から借りてきた単語で、1回払ったらあとは○○放題という意味。「Saufen」は暴飲のこと。要するに、こうしたサービスを提供する飲み屋では、最初1000~1500円を払えば、後は飲み放題なのだ。

若者たちは安いお金でいっぱい飲みすぎて、暴力を振い、人に迷惑かけ、物を壊し、急性アル中で病院に運ばれるなど、大問題になったケースが多発。州によって禁じられてた後でも似たようなサービスをする店は後を絶たず、簡単になくならない状況。もっと規制、監視を強化して若者を飲み屋に行けなくしたとしても、プライベートなパーティでの「Komasaufen」という現象もある。意味は「昏睡暴飲」で、特に若い男性の中で人気がある。飲む場所は違うが、結果はほぼ同じということに……。

ちなみに2010年に起きた死に至るドイツの交通死亡事故のうち、アルコールのせいで起きた死亡事故は約9%になる(2010年ドイツ連邦統計局)。また、赤ちゃん306人に1人がお母さんのアルコール依存によって、何らかの形で身体または精神障害を伴って生まれているそうだ。


ドイツ人は日本人よりお酒が強く、安く飲める環境にあるのだが、その弊害が若者を中心にいろいろ起こっている。我々日本人もとくに将来ある若い人たちの飲みすぎに注意しなければならないだろう。
(羽石竜示)
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