古くから日本に伝わることわざだが、実は外国にも似たような格言があったりする。例えば、「石の上にも三年」ということわざがあるが、英語でも「A rolling stone gathers no moss(転がる石はコケむさず)」というのがある。
転々と仕事を変えるものは成功しない、という意味であり、「石の上にも三年」を異なる表現で表したものだといえる。

先日、ドイツのことわざに「ベーコンを求めてソーセージを投げる」というというものがあることを知った。調べて見ると、「海老で鯛を釣る」と同じ意味らしい。

しかしちょっと待った、なぜソーセージを投げたらベーコンが得られるのだろうか? というかそもそも、ソーセージとベーコンは、海老と鯛ほどの格差があるのだろうか? ツッコミどころの絶えないこのことわざについて、大学でドイツ語を教えるドイツ人に問い合わせてみたところ、以下のような回答を得た。

「ドイツのベーコンは、日本で売っているようなスライスされた小さいものではなく、大きな塊で売っていて、自分で削って食べるものです。このベーコンは吊るして保存されているので、小さいソーセージを投げて、巨大なベーコンの塊をゲットする、という意味のことわざになっています」。
なるほど、ベーコンのでっかい塊を見ることのない日本人には理解が難しいわけである。

また、別のドイツことわざとして、「全てには終わりがある、ソーセージには終わりが2つある」というものがあるらしいが、前半のかっこよさが後半で台無しだと感じるのは筆者だけではないであろう。

「だからなんなんだよ!」とツッコミたくなる気持ちを抑え、このことわざの意味を同じく彼に尋ねてみると、「全てには終わりがある、という格言に冗談でソーセージのくだりをくっつけたものだと思います。ことわざというよりは日本でいうカルタの文章みたいな感じだね」とのこと。説教臭くなりがちなことわざを、「ソーセージ」によって受け入れやすくするというゲルマン魂的な配慮が感じられるが、実際にはあまり使わないということで少し残念である。

また、有名なハンムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」の格言、これをドイツでいうと、「ソーセージにはソーセージを」らしい。
マジである。どれだけソーセージが好きなんだ、ドイツ人よ。

このことわざの元の形は「美味しいソーセージをくれたあなたに美味しいソーセージを」であり、恩には恩で報いるドイツ人の義理固い性格を反映している、素晴らしいことわざなのである。

最後に、話を聞いたドイツ人氏に、「一番好きなことわざはなんですか」と聞いてみたところ、「禿げ頭から髪の毛は生えない」とのこと。「無い袖は振れぬ」と同じ意味だそうだが、こんな単刀直入っぷりも、ゲルマン魂なのであった。
(エクソシスト太郎)