8月22日、ちょっと不思議なニュースが報道されていた。
それは、「メジマグロを食べないで」との見出しの記事で、太平洋クロマグロ(本マグロ)の資源管理に関する会議で、本マグロの刺し身として店頭に並ぶメジマグロを食べるのを控えるよう、水産庁が呼び掛けを行ったというものだ。


この記事を読んで、ニュースを見て、すぐに浮かんだのは次のような疑問である。
「『メジマグロを食べないように』って言われても、私たちに見分けられるもんなのか」
「店頭で『メジマグロ』と書かれたものを買わないようにすれば良いということ? 消費者が買わないようにすれば、需要がないということになって、漁業関係者がとらなくなるということ?」
「そもそもこの呼びかけは誰に向けて行ったもの?」
具体的な呼びかけの内容も相手もわからない、実に不思議な報道に思えた。

具体的に。私たちは今後メジマグロに対してどうすれば良いのか。「メジマグロを食べないで」という呼びかけの意味について、水産庁に聞いてみた。
「『メジマグロを食べないで』というのは、簡単に言うと、小さい個体を食べなければ、稚魚になって成魚になって、子どもを産んで増えるということです」と担当者。
それは「メジマグロを買わないで」という意味なのだろうか。
「いいえ、そういう意味ではありません。『メジマグロをとって流通していかないようにしよう』ということです。表現が違います」

「とって流通していかないように」という意味なら、それは消費者に対する「食べるな」「買うな」の呼びかけではなく、業者に対する呼びかけだったということ?
「そうですね。記者さんの記事の表現で誤解があったかもしれませんが、『個体の小さいものをとらないように』と、流通業者や漁師さん、漁協などに対して呼びかけたものです」
つまり、正確には「メジマグロを食べないで」ではなく、「メジマグロをとらないで」という意味だったということ?
「そうですね」

ところで、もう一つ気になるのは、「とらないで」と言われて、意識的にできるものなのかということ。
もともと小さな個体を狙ってとっているとはあまり思えないが、とってしまったものをリリースすれば救うことができるのだろうか。

「とり方によりますが、おそらく(リリースしても、助かるかは)正直難しいと思います。もともとメジマグロは巻き網でとれてしまったということが多いと思うので、たとえば、平均的に小さなものばかりがとれてしまうときなどは、『網を巻かないで』ということです」

結局、消費者にできることは、「店頭に並ぶメジマグロを買わないようにする」運動ではなく、クロマグロの親が減っている&小さな個体が水揚げされているという事実を知っておくことぐらいなのだろうか。
いろいろ考えさせられるニュースだ。
(田幸和歌子)
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