咳をしていたりすると、「早く病院に行ったほうが良いよ。大人のぜんそくは怖いんだから」とよく言われるもの。
でも、これってなぜ? そもそもぜんそくは子どもの頃に患い、大人になるにつれて症状が軽減される人がほとんどなのだろうか。

『ここ10年で、これだけ変わった! 最新医学常識99』(祥伝社黄金文庫)等の著書を持つ、医療法人社団池谷医院の池谷敏郎院長に聞いた。

「子どもの頃からのぜんそくは、成長とともに気道が鍛えられ、強くなることもあって、症状が軽くなることが多いです。その一方で、大人になってからのぜんそくは治りにくいということは言えますね」

大人になってからのぜんそくの原因は、どんなものなのか。
「大人になってからぜんそくは、小さい頃にアトピーがあったり、じんましんが出やすかったり、花粉症があったり、違うかたちで持っていたアレルギーの素因がぜんそくとして出る場合が多いです。アレルギーがその姿かたちを変えながら次々と続く、いわゆる『アレルギーマーチ』というものですよ」

大人のぜんそくが出るきっかけは、花粉の刺激や、家の中のカビ、ペットを飼ったら……など、様々だそう。

「咳が続く原因はぜんそくと同じで、風邪の後に長引きやすい『咳ぜんそく』の可能性もあります」

そういえば、咳が続いて病院にかかったら、吸入を処方され、それを使ったらすぐに治ったことがあった。吸入には「ぜんそく」という名前があったけど、もしかして「ぜんそく」と診断されたのだろうか。
「おそらく『ぜんそく様気管支炎』といって、ぜんそくに近い状態だと思います。ぜんそくは、年に何度かゼイゼイいう症状で、一度だけみても、ただの咳か風邪だと思ってしまいがち。医師は何度か繰り返す同じ症状をみて『ぜんそく』を疑います」

つまり、一度みただけではわからず、継続的にみて初めて診断できるものだということ。
「ぜんそくは、風邪をひいたときだけ症状が現れることも多く、医師にも気づかれないまま、お決まりの風邪の治療で済まされてしまうことも多いんです。
解熱剤や抗生物質は全く効果ありませんし、咳止めもかえって症状を悪化させてしまう可能性があります」
ちなみに、抗生物質が効くのは、「風邪」のうち数%だけ。マイコプラズマや溶連菌の感染症など、特殊な場合に限られるとのこと(!)。

「大人のぜんそくは怖い」とよく聞くけれど、実際に自分がぜんそくになっていても気づいていない人は案外多いかも。

頼れる「かかりつけ医」なら、喘息を見逃さずに適切な治療をしてくれるはず。それでも気になる咳が続く場合には、ぜひ一度アレルギー専門医か呼吸器専門医への受診をしましょう。
(田幸和歌子)