NHK連続テレビ小説『あまちゃん』にも登場した「きたてつ」こと「北三陸鉄道」。そのモデルになったのが、岩手県を走る「三陸鉄道」だ。
いまだ不通区間があるが、いよいよ2014年5月に全線復旧する。

なかでもロケに使われた北リアス線の久慈~田野畑間は観光客も増え、その『あまちゃん』効果が話題になっているが、実はこの三陸鉄道、『あまちゃん』前からかなりユニークな企画をおこなっている。地元では「三鉄はいつもいろんなことをやっている」という印象を持っている人も少なくないらしい。

たとえば、2006年から運行している「こたつ列車」もその1つ。その名のとおり、車内が堀こたつになっているもので冬の一番人気。北国ならではのほっこり感が味わえるだけでなく、岩手版なまはげ「なもみ」が登場するなど、乗客を楽しませる演出にも抜かりがない。
意外にも若い人の乗車も多いそう。

そのほかにも列車内でビール飲み放題の「ビール列車」、元旦恒例、太平洋から昇る初日の出を駅ホームで拝める「初日の出号」など、個性的な企画列車がいろいろ。ちなみに「こたつ列車」は夏の間は「お座敷列車」として運行されている。

さらに2011年には三陸鉄道の2次元イメージキャラクターとして、「鉄道ダンシ」もデビュー!かなりのイケメンぞろいゆえ、熱狂的な女性ファンも多いそうで、グッズも充実。全国のイオンでは、パッケージに「鉄道ダンシ」が描かれたコラボ商品「骨取りさんま」が売られているので、見たことがある人もいるのでは? 昨年秋には「鉄道ダンシ」メンバーの1人である田野畑ユウが車内放送をおこなう「鉄道ダンシ田野畑ユウラッピングレトロ列車」というラッピング車両も走らせるなど、同社のPRにひと役もふた役も買っている様子だ。

こうしたユニークな企画を次々にしかける理由は何か? 三陸鉄道旅客サービス部長の富手さんいわく「地元のお客さんだけではやっていけないから観光客も呼び込みたい、というのはありますが、同時に地元の人にも楽しんでもらいたいと思っています」とのこと。

実際、企画列車などに対しては地元の反響も上々だそう。

もちろん、『あまちゃん』にちなんだイベントも企画している。2013年12月24日には「三鉄“じぇじぇじぇ”サンタカーニバル」なるクリスマスイベントを実施。ゲストにはあまちゃん挿入歌「暦の上ではディセンバー」に歌唱参加した「ベイビーレイズ」が登場。宮古駅前広場に集まった300人の観客の前で熱唱した。

さらにイベントでは、ベイビーレイズが、同日にお披露目された「キット、ずっと3号」に乗り込み、停車する各駅でキットカットのクリスマスプレゼントを配布。
同車両は18年前に発生した阪神・淡路大震災で本社が被災したネスレ日本が、全国から支援してもらった恩返しとして三陸鉄道、および三陸地域を応援する「キット、ずっとプロジェクト」の一環としてラッピングをしたもの。デザインには三陸鉄道沿線に住む地元の方々の「ありがとう」や未来へ向けてのメッセージが掲げられており、これが3号目となる。

震災以降、復興応援する目的にしたラッピング列車は増えているようで、現在ではほかに全国納豆協同組合連合会による「納豆列車」やヒーリング・レーベル、株式会社デラの「ココから号」などが走っているそうだ。

基本的には市民の足であるが、攻めの企画にも抜かりがない三陸鉄道。 『あまちゃん』の舞台としての魅力はもちろん、今後の企画列車にも大いに期待したい。
(古屋江美子)