世界には、ビールが水より安い国があるらしい。仏ラ・トリビューン紙によると、それはベルギー、ルクセンブルク、チェコ、スロバキア、クロアチア、プエルトリコ、ニカラグア、コスタリカ、パナマの9カ国で、キリン食生活文化研究所の調査で判明したという。


例えばチェコの場合、ミネラルウォーターが500mlで1.1ユーロ(約155円)であるのに対し、ビールは1パイント(568ml)あたり0.99ユーロ(約140円)だそうだ。同紙は、現在ビールは水に次いで世界で2番目に購入量が多い飲料だとも報じている。両者どれくらいの量が消費されているのかというと、水は1秒間に6500リットル、ビールは5600リットル費やされているのだとか。世界のビール事情とはどのようなものなのか。

キリンビールが今月発表したレポートによれば、世界でもっともビールを好む国民は、2012年でチェコ(1人当たり年間約149リットル)、オーストリア(約108リットル)、ドイツ(約106リットル)、アイルランド(約98リットル)の順だった。チェコはピルスナー・タイプのビールの発祥地(日本でイメージされるビールは主にピルスナー・タイプのもの)であるし、ドイツはオクトーバーフェスト、アイルランドはギネスビールと、納得の面々といえる。


筆者が暮らすフランスは、「フランスといえばワイン」のイメージ通り、それら国々と比べれば1人当たりの年間消費量は約30リットル(欧州で9位)と低い(仏ビール醸造業者組合)。しかしビールも男性や若者を中心に街中のカフェやバーなどで、そこそこ飲まれており、国内では北部や北東部を中心に有名な生産地が広がっている。クローナンブールやペルフォースといったブランドは、海外でも知る人は少なくない。

一方で日本人は、1人当たり年間約44リットルを消費している。つまり日本人は、フランス人よりビールで乾杯する回数が月に何回か多い、というような感覚だろうか。

チェコやドイツなど、100リットルを超える上位の国々と比較すると、日本の1人当たりの消費量はかすんでしまう。
だが、アジアの中では日本はもっとも高く、ビールを好む国民といえる。キリンによれば、アジアは中南米やアフリカと共に世界のビール消費量の牽引役となっており、ビールの成長市場だそうだ。インド、タイ、ベトナムなどのアジアをはじめ、中南米、アフリカなどの新興国では高い伸びを示している。一方で2012年、欧州は2年ぶりにビール消費量が減少に転じた。

ビールの楽しさは、世界のどこでも楽しめるということにある。ワインやウィスキーと違い、どの国を訪れても大抵はその国独自のビールを見つけられる。
ビールを知ることは世界各国を知ることにつながるのだ。
(加藤亨延)