新生活にちょっと疲れを感じるタイミングでゴールデンウィーク(以下GW)がやってくる。そして、気分が滅入る梅雨が明けるタイミングで夏休みがやってくる。

GWや夏休みにパワー補給ができる最適な場所はどこか。
そこで注目したのが台北である。
日本からそれほど遠くなくて、小籠包や杏仁豆腐といった日本人にもなじみ深い食べ物がある。
まだ行ったことがないのだが、台湾最大の都市で、にぎやかな観光スポットが多いのは知っていた。現地へ行って、アジアのエネルギーを感じながら、パワーを分けてもらいたい。

GWや夏休みは、多くの人がどこかへ行って、一般の観光ガイドに載っているような場所で記念撮影をしたり、名物を食べたりして、Facebookに写真を投稿するものだ。
他の投稿に埋もれないような体験を台北でして、ひときわ目を引く写真を撮って自慢したいものである。

パワー補給かつ話のネタになる体験をしたいと思い、出会ったのが『史上最強の台北カオスガイド101』という本である。

本書は、台北と恋に落ちたという著者兼カメラマン兼担当編集者の丸屋九兵衛さん(本業はヒップホップ評論家でもありラジオDJ。関連写真参照)が「地域編」「食事編」「知性&アート編」「ファッション&ミュージック編」の構成で台北をガイドしている。

タイトルに“101”と書いてあったので、著者のおすすめスポットや食べ物が101個紹介されているのかと思ったが、台北101(信義地区に建っている101階建てのビル)が発想源だった。
“台北カオスガイド”ともうたっているので、小籠包や杏仁豆腐をおすすめされたら、“101”の件を含め、いい加減な本になるのだが、そこは忠実に混沌としたスポットや食べ物などの紹介がたくさん載っていたので、安心した。


丸屋さんがおすすめする台北スポットは多数あるが、そのなかから3つに絞って教えてもらった。

【1】松山文創園区。
小規模な展示を多数同時に展開するミュージアムと各種ショップと公園が合体したこの地区は、
台北が誇るアートとデザインと知性を感じられる場所。台北市の歴史(日本も深く関わっている……善かれ悪しかれ)を垣間見られる一角でもある。大都市の中心にありながら、落ち着いたエリア。

【2】台北を代表する本屋「誠品書店」、特に信義店。

よくある「デパートの一部に入っている書店」ではなく、その逆を行く「書店自体がデパート化してしまう」という発想で世界を仰天させた、総合エンターテインメント・ブックストアだ。「書店の未来がここにある」とまで評されている。

【3】夜市(ナイトマーケット)。
「眠らない街」台北のヴァイタリティを手軽に体感できる場所。行かないと損だよ。

教えてもらった3つのスポットは本書でももちろん紹介されている。

ネット書店を運営している私はぜひ「誠品書店」に行きたいと思った。
中国語が読めなくも心地よいというこの本屋で日本では味わえない空間を体験したい。

そして、夜市でパワーを補給したい。本書には夜市の写真が多数掲載されている。
漢字がたくさんの看板と連なる屋台、その屋台で立っているおばちゃんの写真は日本の縁日のよう。なんだか温かな雰囲気である。


早速、台北旅行について検索してみると、本書には掲載していない(つまり日本でも有名なスポットや料理)情報が多数ヒットする。
ただ、旅行会社で旅行を申し込むだけじゃ、丸屋さんが紹介している“本物の台北”にたどり着けないようだ。

丸屋さんにひと味違う台北旅行ができる方法を聞いてみた。

「ひと味違う台北を味わうために必要なのは……なるべく地元ピープルのふりをすることである(そのための大前提として、まずは団体ツアーを避けなければならない)。地元感を出す、つまり“日本人感を消す”ことを推奨するのには理由がある。台北の皆さんは、日本人観光客と見ると、“日本人が好きな台北(or 日本人が好きな中華圏)”というステレオタイプにのっとったホスピタリティ(もてなし)を試みる。
つまり食べ物で言えば、“小籠包と酢豚と杏仁豆腐”を薦めてくるのだ。それは、彼らが自身の価値観に従っているのではなく、『日本人はこういうものが好きだよね』という定型を繰り返しているに過ぎない。それはそれで善意の表れではあるのだが、自分の先入観の前に、彼らの先入観というフィルターを押し付けられることになるのだ。真実を阻む色眼鏡のダブルパンチ。これは避けたい。だから、あなたが本物の台北を味わいたければ、街に溶け込むこと。そして、台北ピープルの“日本人対応マニュアル”にあてはまらない存在になること。そうすれば“本物の台北”にたどり着けることだろう」

なるほど……。日本人感を消すため、本書は旅の供にするが、カバンから取り出すのは必要最低限にしよう。

そして念入りな予習をして、夜市を歩き慣れた感じでかっ歩し、店では注文慣れした感じで胡椒餅や豆花(トウファ)を頼もう。

パワー補給はもちろん、みんなが味わったことのないエキサイティングでカオスな台北を体験できるはずである。
(boox/茶谷)