今年の8月は台風が9個と平年より多く発生、そのうち7個が日本に接近した。9月には台風21号と24号が列島を縦断し、各地に大きな被害をもたらした。
台風がニュースになると、進路や天気の情報とともに、ちょっと気になるのがその名前。最近では台風21号に「チェービー(韓国語でつばめ)」、24号に「チャーミー(ベトナム語で花の名前)」という名称がつけられていた。
これはアジア名と呼ばれるもので、日本含むアジア太平洋地域の14か国が加盟する「台風委員会」がつけている国際的な呼び名。14か国が10個ずつ名前を提案し、全部で140個の名前が用意されている。
1番はカンボジアが提案した「ダムレイ(象)」、以降はリストに用意された名前が順番につけられ、140番目のベトナムが提案した「サオラー(ベトナムレイヨウ)」が使われると、ふたたび「ダムレイ」に戻る仕組みだ。
そもそも台風に名前をつけるのはなぜだろうか? 気象庁にその理由を聞いてみたところ、
「アジアの人々になじみのある名前を台風につけることによって、アジアの人々の台風に対する防災意識を高めることが、台風のアジア名が提案された理由のひとつです」
とのこと。個々の台風を識別するだけではなく、人々の防災意識を高め、被害を少しでも軽減するという目的があるようだ。
各国が10個ずつ提案しているアジア名、日本は「星座の名前」を提案している。
「星座は台風と同様に自然の事物であり、人々に親しまれていることから、台風の名前として提案しました」(気象庁)
星座といえば、てんびん座やヤギ座は分かるが、トカゲ座やハト座は少々マニアックではないだろうか? 例えばオリオン座やカシオペア座など、もうちょっとメジャーな星座を選んでもいい気がする。
その辺りの事情を聞いてみると、88個のある星座の中から以下のようなポイントを考慮して選んでいるそうだ。
・その名前の流通に伴う利害や気象情報に対する誤解が生じないように、特定の個人・法人の名称などを避けること
・音節が多くなくて発音しやすいこと
・文字数が多すぎないこと(アルファベット9文字以内)
・発音が他国の言語で感情を害するような意味をもたないこと
なるほど、カシオペアやオリオンだと特定のブランドや商品名が頭に浮かんでしまう。「いっかくじゅう座」や「みなみのさんかく座」は発音が難しく、アルファベット表記も長くて読みにくい。
順番に繰り返し使われるアジア名称だが、場合によってはその後使用されず、「永久欠番」になる場合もある。
「台風により大きな被害を受けた国が、その台風の名前を以後使わないよう台風委員会に申請して承認されれば、それ以降は使用されなくなります。
日本が提案した名前の中では、過去に「ワシ」「コップ」が引退し、「ハト」「コグマ」が後任となっている。
そうなると気になるのは次に提案される名前。先程の選定基準から予想すると「シシ」「ハエ」「オトメ」あたりが有力候補か……と、ここで気がついた。
名前が使われなくなるのは、どこかの国で台風によって人命や経済に深刻な被害が出てしまったとき。のんきに次の名前を予想している場合ではないという気がしてくる。
どうしても避けることのできない自然災害。しかし台風は地震と違い、予報を知ってあらかじめ備えることができる。
あらためて気象庁に台風が接近したときの注意を聞いてみた。
台風が自分の住むところに近日中に近づきそうなときは、台風の進路や強度の現在の状況や予報を最新の情報で確認するとともに、家の外に飛ばされそうなものを置いていないか、非常用品や水などの確保は大丈夫かなどについて点検しましょう。
一般に台風は強い雨や風を伴いますので、台風が近づいたときは、増水した河川、がけ崩れの起こりやすい場所、高波が打ち寄せる海岸、高潮によって浸水するおそれのある低い土地などには、絶対に近づかないようお願いします。
また、風が強いときは飛散物に当たる危険があるため、外出は控えましょう。
台風は7月から10月にかけて発生・接近することが多く、もうしばらくシーズンは続く。
「今まで大丈夫だったから」「自分だけは大丈夫」と決して甘く見ないこと。何より大切な命を守るために、迷ったら無理せず予定を延期・中止する勇気も必要だろう。
どうか、今のアジア名ができるだけ長く使われますように。星座に、願いを。
(宮沢弥栄子)
平成30年台風第24号 ひまわり8号による観測画像(気象庁ホームページより)
台風がニュースになると、進路や天気の情報とともに、ちょっと気になるのがその名前。最近では台風21号に「チェービー(韓国語でつばめ)」、24号に「チャーミー(ベトナム語で花の名前)」という名称がつけられていた。
これはアジア名と呼ばれるもので、日本含むアジア太平洋地域の14か国が加盟する「台風委員会」がつけている国際的な呼び名。14か国が10個ずつ名前を提案し、全部で140個の名前が用意されている。
1番はカンボジアが提案した「ダムレイ(象)」、以降はリストに用意された名前が順番につけられ、140番目のベトナムが提案した「サオラー(ベトナムレイヨウ)」が使われると、ふたたび「ダムレイ」に戻る仕組みだ。
「ヤギ」「テンビン」は日本の星座名から
そもそも台風に名前をつけるのはなぜだろうか? 気象庁にその理由を聞いてみたところ、
「アジアの人々になじみのある名前を台風につけることによって、アジアの人々の台風に対する防災意識を高めることが、台風のアジア名が提案された理由のひとつです」
とのこと。個々の台風を識別するだけではなく、人々の防災意識を高め、被害を少しでも軽減するという目的があるようだ。
各国が10個ずつ提案しているアジア名、日本は「星座の名前」を提案している。
「星座は台風と同様に自然の事物であり、人々に親しまれていることから、台風の名前として提案しました」(気象庁)
星座といえば、てんびん座やヤギ座は分かるが、トカゲ座やハト座は少々マニアックではないだろうか? 例えばオリオン座やカシオペア座など、もうちょっとメジャーな星座を選んでもいい気がする。
その辺りの事情を聞いてみると、88個のある星座の中から以下のようなポイントを考慮して選んでいるそうだ。
・その名前の流通に伴う利害や気象情報に対する誤解が生じないように、特定の個人・法人の名称などを避けること
・音節が多くなくて発音しやすいこと
・文字数が多すぎないこと(アルファベット9文字以内)
・発音が他国の言語で感情を害するような意味をもたないこと
なるほど、カシオペアやオリオンだと特定のブランドや商品名が頭に浮かんでしまう。「いっかくじゅう座」や「みなみのさんかく座」は発音が難しく、アルファベット表記も長くて読みにくい。
大きな被害をもたらした台風の名前は「引退」
順番に繰り返し使われるアジア名称だが、場合によってはその後使用されず、「永久欠番」になる場合もある。
「台風により大きな被害を受けた国が、その台風の名前を以後使わないよう台風委員会に申請して承認されれば、それ以降は使用されなくなります。
その際に、その名前を提案した国が新しい名前を提案することになります。日本が提案した名前が使用されなくなれば、別の星座を提案します」
日本が提案した名前の中では、過去に「ワシ」「コップ」が引退し、「ハト」「コグマ」が後任となっている。
そうなると気になるのは次に提案される名前。先程の選定基準から予想すると「シシ」「ハエ」「オトメ」あたりが有力候補か……と、ここで気がついた。
名前が使われなくなるのは、どこかの国で台風によって人命や経済に深刻な被害が出てしまったとき。のんきに次の名前を予想している場合ではないという気がしてくる。
台風24号チャーミーが通過した後、自宅の前に消火器が転がっていた
台風が近づいたときに注意すべきこと
台風25号はコンレイ、カンボジアの伝説の少女の名前(気象庁ホームページ、10月4日10時半の衛星観測画像)
どうしても避けることのできない自然災害。しかし台風は地震と違い、予報を知ってあらかじめ備えることができる。
あらためて気象庁に台風が接近したときの注意を聞いてみた。
台風が自分の住むところに近日中に近づきそうなときは、台風の進路や強度の現在の状況や予報を最新の情報で確認するとともに、家の外に飛ばされそうなものを置いていないか、非常用品や水などの確保は大丈夫かなどについて点検しましょう。
一般に台風は強い雨や風を伴いますので、台風が近づいたときは、増水した河川、がけ崩れの起こりやすい場所、高波が打ち寄せる海岸、高潮によって浸水するおそれのある低い土地などには、絶対に近づかないようお願いします。
また、風が強いときは飛散物に当たる危険があるため、外出は控えましょう。
台風は7月から10月にかけて発生・接近することが多く、もうしばらくシーズンは続く。
「今まで大丈夫だったから」「自分だけは大丈夫」と決して甘く見ないこと。何より大切な命を守るために、迷ったら無理せず予定を延期・中止する勇気も必要だろう。
どうか、今のアジア名ができるだけ長く使われますように。星座に、願いを。
(宮沢弥栄子)
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