夜にテレビや漫画、本を見たり、翌日食べたいものを考えたりしているうち、猛烈な空腹を感じてしまうことがある。そんなとき、「夜中に食べるのはデブのもとだし、体にも良くないから」と我慢し、「朝、空腹で目覚めたら、思いっきり食べてやる!」と、朝食を楽しみに寝ることがしばしば。
しかし、不思議なことに、朝起きてみると、夜の猛烈な食欲はどこへやら。「朝からラーメンライス食べてやる!」とか「かつ丼だって、すき焼きだって朝からイケる!」と思っていたはずが、なぜかおさまっていて、普通に朝食をとるという繰り返し。
朝になってみると「昨夜の猛烈な空腹は、何だったのか。どこへいったのか」と不思議に思えてならない。
これってなぜ? ダイエット専門院・渋谷DSクリニックの林博之院長に聞いた。
空腹がなくなる要因とは
「夜中の空腹が朝になくなる、あるいは軽減される理由は、明確には言いきれませんが、いくつかの要因があると考えられます。まず朝起きてすぐは、副交感神経が優位に立っており、交感神経が優位に立っていない可能性があること。寝ている間は腸肝の動きが緩やかになっているため、起きてすぐはまだ動いていない可能性があることなどです」(林院長 以下同)
また、夜に摂った食事は消化吸収され、余分なブドウ糖はエネルギーの予備として、筋肉や肝臓、脂肪に蓄えられている状態だそう。
「そのため、朝起きてすぐは体の中にエネルギー源がストックされており、エネルギーを外部から取り入れる必要がないため、体は食べなくてよい=お腹が空いていないと反応する可能性が考えられます」
夜中、胃の中にぽっかり空いた空間が、朝になると自然に埋まっているようなイメージがあったが、朝はまださまざまな器官が完全に起動していないことや、エネルギーがストックされた状態ということだったのか……。
そもそも空腹はどんな時になるのか
では、夜中の猛烈な空腹は何なのか。もしかしたら気のせいだったのだろうか。
「夜中の猛烈な空腹の原因としては、早食いや睡眠不足、炭水化物過多、夕食の時間が早すぎること(例えば18時に夕食、就寝は25時)なども考えられますが、他にもいくつかの原因が考えられます」
林院長はそう言って、そもそもの空腹のメカニズムについて、次のように説明してくれた。
「夜だけに限らず、満腹と空腹は、血液中のブドウ糖と体内の脂肪が分解されてできる『遊離脂肪酸』の濃度によって決定されます。
空腹感は、さまざまな活動によって体内のエネルギーが消費されると血糖値が低下し、体に蓄えられた脂肪を分解してエネルギーを作り出そうとする仕組みから起こるそう。
「この脂肪を分解するときにできるのが『遊離脂肪酸』です。遊離脂肪酸が血液中に増えてくると、この情報が摂食中枢に送られ、空腹感となって、エネルギーの補給を促します。実は、食事と食事の間に『ちょっと小腹が空いた』と感じるのは、余計な体脂肪が燃えようとする時間です。そのため、『小腹が空いた』状態で20分ほど我慢をすると、脂肪酸がエネルギーとして使われ、空腹感も消えていくんですよ」
げげ! 「小腹が空いた=絶好のおやつタイム」だと思っていた。ちょっと我慢すれば、それが消えていたとは……。
「空腹感は血中の糖質と胃袋の状況によって起こります。特に、血中の糖質(血糖値)が不足している(=脳が糖質を必要としている)こと、さらに胃袋の中に食物がなくなり相対的に胃酸が増え、その刺激が脳に信号を送ることで、空腹感が認識されます」
この空腹感をコントロールするには、「何かを食べる」ということになる。
とはいえ、ダイエット中で「空腹感が困る」という場合には、空腹感と関係している2点「血中の糖質」と「胃袋」について、それぞれ対処することがオススメだという。
「まず血中の糖質を補充するために、飴を舐めること。さらに、胃に対してはコップ1杯の水を飲んで急激な空腹感から免れることを提案しています」
ちなみに、人間は8時間ごとに体の機能を変化させるとか。
4時~12時は体の排泄機能が高まり、12時~20時は食べ物を消化する機能、20~4時は消化した栄養素を吸収・同化し、老廃物や毒素を集める機能が高まるというメカニズムだそう。
「そのため、理想の入眠時間は20~4時。この時間帯に質の良い睡眠をとれば、翌朝体の中の不要なものが吐き出され、気持ちの良い朝を迎えることができるとされます」
また、就寝前や起床後に「コップ1杯の白湯」を飲むと、体が温まり寝つきが良くなるのと、朝の目覚めが良くなること、さらに内臓の疲労回復やデトックス、代謝アップ、便秘改善、美肌効果なども期待されるそう。
夜中の空腹や、朝の目覚めの悪さに悩む人は、ぜひお試しあれ。
(田幸和歌子)