暑くなったら、全身から汗をかく。緊張したら、脇汗をかく。
そして僕の場合、グレープフルーツやオレンジのような柑橘系の酸っぱいものを食べると、暑くないのに、頭や顔からびっしょりと汗が噴き出る。好きな果物なのに、汗が出る。で、食べ終わるとサッとひく。
そんな人、いないだろうか?

どうして、酸っぱいもので汗が出るんだろう? もしかして、体の異常のサインなんだろうか? 汗について詳しい専門家に伺った。

「食べて汗をかくのは“味覚性発汗”というもので、とても自然な反射作用です。辛いものや甘いもの、苦いものなどでも、汗をかく人はたくさんいます。
ですので、体は基本的に問題ないですよ。食べ物を口に入れると、唾液が出ますよね。それと似た反射のイメージで、体質によって、食べたことで頭や顔などにある発汗神経が刺激されて、汗が出るようです」

これって、唐辛子のカプサイシンで汗をかくのと同じ?
「確かに間違っていませんが、違う部分もあります。味覚性発汗の場合は、頭や顔の“発汗神経”が直接刺激されて汗が出るんですが、カプサイシンの場合は、体の“温度を感じる受容体”が、辛さを熱さと間違えて脳に伝えるという側面もあるようです。それで、汗が出るみたいなんですね」

治す方法ってあるの?
「基本的に病気ではないので、治すというものではないですよ。自然なことと思ってください。
ただどうしても気になるようでしたら、その刺激に慣れる、例えば酸っぱいものを頻繁に食べることで和らぐ場合もあります。効果がない場合もありますが」

汗には、主に3種類がある。暑いときなどにかく「温熱性発汗」、緊張などでかく「精神性発汗」、そして今回取り上げた「味覚性発汗」。
さっきの話にもあった通り、味覚性発汗は酸っぱいものに限らず、辛いものや甘いもの、あと特定の食品でも起こるという。よく挙げられる例として、チョコレートやチーズでも、汗をかく人は多いとされる。

「味覚神経による自律神経機能の反応について」(東京家政大学研究紀要第39集より)という研究で、「甘味、塩味、酸味、苦味、辛味」の5種類の味覚刺激に、どのくらい汗が出るのかという実験が行われている(被験者は10名の健康な女子学生)。

結果は平均として「酸味>苦味>辛味>塩味>甘味」の順で、反応が強かったという。中でも酸味は、10名中6名が、5つの刺激の中で最も強く反応を示していた。辛味で強く反応する人も多かったけれど、一方で辛いものを普段からよく食べてる人は、ほとんど反応を示さなかったんだとか。慣れてる人は汗をかきにくいことが、実験でも示されていた。

ちなみに僕の場合、グレープフルーツの匂いを嗅いだり、手にしただけでも汗が出てくる。これも味覚性発汗?
「過去に汗をかいた経験や、汗をかくんじゃないかと思うことで、食べなくても汗が出ることがあります。
また、食べたときは余計に汗をかいたりします。これは無意識に、精神性発汗も引き起こしているんですね。そうなったら、食べたとき汗をかいても、気にしないことが大切です。簡単なことではないですし、それで改善するとも限りませんが」

食べ物で汗をかくのは厄介だけど、心配する必要はなさそうだ。
どんどん食べて汗をかいてやる! くらいの気持ちでいたいと思います。
(イチカワ)

※原因はこれに限らないので、あまりにも心配な方は、医師にご相談ください