食事中にクシャミをしたあとのテンションの下がり具合は、計り知れない。

クシャミに対して無抵抗なら、噛み砕いた食べ物がテーブルにベッシャリ。
それを防ごうと口を手で覆えば、今度は手のひらにベッチョリ。そして撒き散らすまいと口をふさげば、逆流して鼻の奥にペッチョリ……。
どんな結末でも、かなり萎える。

中でも地味にダメージが大きいのは、食べ物の粒が鼻の奥に入っちゃったとき。テーブルも手のひらも、拭いたり洗ったりすればなんとかなる(料理に入っちゃうとキツいけど)けど、鼻の奥は取ろうとがんばっても取れない。それにずっと異物感が続いて、結構気になるもの。


そんなときはどうしたらいいんだろうか。自由が丘にある笠井耳鼻咽喉科クリニックの笠井先生に伺った。
「通常は鼻を吸うことで、のどの方へ送り込むことが出来ますが、異物の種類によって、あるいは粘膜の襞の中にはまり込むと、異物は動かずに辛い状態が続きます。鼻の前の方まで来ている異物は、鼻をかむことで簡単に出てくる場合もありますが、なかなかとれない場合には、鼻うがいをする方法もあります。温生食水(生理食塩水)を前鼻孔からのどへ流すこの方法は、慣れた人には良い方法でしょう」
そっか、洗い流すわけだから、鼻うがいはまさにといった感じ。花粉症や風邪予防などでよく出てくるこの方法は、ここでも有効なようだ。


ところで、そもそも逆流した食べ物はどこに入っちゃうんだろう。
「口の奥から上咽頭(鼻の奥の突き当たり、鼻とのどの境界付近)へ入った食べ物は、そこにとどまることも多いのですが、鼻の後方(後鼻孔)を経て鼻腔内にまで入り込むことがあります。上咽頭や鼻腔内部は知覚が過敏な場所ですから、異物感が非常に強く出て鬱陶しい状態が続きます」

ちなみに今回みたいなケースが、シャレにならなくなることもあるという。
例えば異物の種類(豆類など)によっては、鼻で吸い込むときに、気管の方へ入り込む場合がある。呼吸機能が良い人ならむせるくらいで済むけれど、幼小児や呼吸筋の衰えたお年寄りなどでは、窒息や肺炎(燕下性肺炎)などの危険があるんだとか。それに取れないまま放置すると、食べ物の種類によっては鼻腔内で腐っちゃうこともあって、副鼻腔炎の原因にもなり得るという。

だからもちろん、
「どうしても取れない場合には、耳鼻咽喉科を受診して下さい」
とのこと。レアケースではあるけれど、頭に入れとくべきかもしれない。

自然と取れるだろうって軽く考えちゃいけない、鼻の奥に入った食べ物。
ひどく面倒なことになる前に、早めの対応を心がけてください。
(イチカワ)