「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと

2018年3月19日から、大阪の万博記念公園に建っている「太陽の塔」の内部公開が始まった。

1970年に開催された通称“大阪万博”こと「日本万国博覧会」のシンボルとして、芸術家・岡本太郎によって制作された「太陽の塔」。
高さ70メートルの巨大なオブジェで、一目見たら一生忘れられないような強烈な造型である。

細かい修復を行いながらも1970年当時の姿のまま今なおそびえ立ち、大阪のシンボルとして多くの観光客を集めているその「太陽の塔」。大阪万博の開催当時は「テーマ館」という展示施設の一部であった。「太陽の塔」は足元に広がっていた地下スペースに“地下展示”が、手の高さに当時設置されていた屋根のようなスペースにも展示空間があった。さらには「太陽の塔」自体の内部も展示スペースになっていて、「生命の樹」というオブジェが設置されていたのだ。

大阪万博の会期終了と同時に塔の内部の一般公開も終わり、それ以来、取材などを除き48年間に渡って塔の中はただただ閉ざされた空間になっていた。
それがこのたび、大規模な修復の末についに再び公開されることになった。入館は予約制なのだが、人数に制限があるため、すでに数カ月先まで埋まっている状態。

筆者は運良く平日の観覧券を予約することができ、先日内部を見てきた。その結果、当初想像していたレベルの10倍ぐらい感動した。今回はそのレポートをお伝えするとともに、これから塔の内部を見に行かれる方に事前に知っておいた方がいいポイントを紹介したいと思う!

ポイントその1「チケットを取ったら予約完了メールを大切に」


「太陽の塔」の内部に入館するには事前予約が必要だ。
※ちなみにここからの話は一般の方が個人で予約する場合の話。団体予約については料金や予約方法も異なるのでご了承ください。


太陽の塔 入館予約サイト」でオンライン予約をすることができるのだが、その際には専用のアカウント作成が必要となる。

アカウントを作成し、ログインすることで「予約カレンダー」上から空き枠のある日について予約を行うことができるようになる。塔内に入館できる時間は30分間なので、予約も30分ごとの枠を押さえるシステムになっている。
4カ月先まで受け付けており、2018年4月20日現在であれば、2018年8月19日分までの予約が可能となっている。残念ながら現在は予約がすべて埋まっている状態だが、毎日、原則的には深夜0時から4カ月先の予約枠が解除されるので、マメに予約カレンダーをチェックしてほしい。

また、万博記念公園でイベントが開催されて開園時間が延長される期間には塔内の入館時間も延長されることがある。
そうした情報についても「太陽の塔オフィシャルサイト」上の「お知らせ」をマメにチェックする必要がある。

無事予約が取れたら、アカウント作成時に登録したメールアドレス宛てに“【太陽の塔】ご予約QRコード”というメールが送信される。このメール内のURLをクリックすると表示されるQRコードが入館時に必要となるので、入館時に携帯するスマホからこのメールを閲覧できるようにしておくか、QRコード自体をプリントアウトしておこう。
「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと


ポイントその2「太陽の塔に入館するためには公園への入園料金とは別に料金が必要」


さて、いよいよ予約した日になったとする。万博記念公園の前に到着したら入園チケットの販売機の脇にある「太陽の塔専用券売所」へ。
「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと

ここで前述のQRコードを提示すると入館チケットを購入することができる。
公式サイト上には「本人確認のための身分証明書(運転免許証、保険証、パスポート、マイナンバーカード等)をご持参ください」との記載があり、私は提示を求められなかったが、念のため用意しておいた方がいいだろう。


「太陽の塔」内部への入館料は“大人700円、小中学生300円”となっている。また、「太陽の塔」は公園の敷地内にあるため、上記とは別に公園への入園料“大人 250円、小中学生 70円”が必要になる。つまり、大人一人で「太陽の塔」に入館したいとすれば、合計950円が必要だということである。この窓口で両方のチケットを同時に購入することができる。
「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと


ポイントその3「時間に余裕があれば『国立民族学博物館』も見ておこう」


万博記念公園に隣接する通称“みんぱく”こと「国立民族学博物館」は、文化人類学・民族学の資料を集めた施設。世界中のさまざまな民族が持つ文化について広大な敷地と多数の展示品で紹介している。と、書くとなんだか小難しそうに聞こえるかもしれないが、例えば「世界の各地でどんなお祭りが行われ、その時にどんな衣装を着るのか」とか、「各地の伝統的な楽器」とか、そういうことを目の当たりに知ることができてすごく面白い。

「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと

「太陽の塔」の作者である岡本太郎は、塔の地下に世界中の民族の作った仮面や神像を集めようと考えた。そこで万博に先駆けて研究者たちが世界中の資料を収集して回り、その結果集まった約2,500点もの品々が実際に塔の地下に展示されたのだ。そして、その収集活動が、万博終了後に「国立民族学博物館」が創設されるきっかけとなった。つまり、「太陽の塔」と「国立民族学博物館」は切っても切れない関係なのである。
「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと

後述するが、現在「太陽の塔」に入館して見ることができる「地底の太陽ゾーン」というエリアに展示されている仮面や神像は、「国立民族学博物館」に収蔵されていたもの。「太陽の塔」に入館する前に「国立民族学博物館」の展示を見ておくと、岡本太郎が表現しようとしていたものへの理解がより深まると思うので時間に余裕があればぜひ立ち寄ってみてほしい!

ポイントその4「さらに時間に余裕があれば公園内も散策しておこう」


なかなか「太陽の塔」内部にたどり着かなくて申し訳ないが、入館までに時間があるなら、まず塔をよく見ておきたい。色々な角度から見ておくと入館した際の感動がより高まるのである。

「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと
「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと

公園内を散策すると、万博開催時に「太陽の塔」の周りをぐるっと囲っていた屋根の一部が展示されていたり、他にもさまざまな遺構が残されているのを見ることができる。
「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと

また、万博の記念館である「EXPO'70 パビリオン」にも当時の活況が伝わる資料が多数展示されているので、もし余裕があればこちらも……と、なかなかそんなに時間の余裕と体力がある方はいないかもしれないが、できればおすすめしておきたい。

正面入園口付近には「太陽の塔」グッズを扱うショップもあり、これがまた楽しいのでチェックしてみてください。
「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと


ポイントその5「入館時間の20分前に入口に到着しておくのがベスト」


いよいよ予約してあった「太陽の塔」入館時間が近づいてきた。塔の内部への入口は、塔を正面にみて左側にある。塔にとっての右腕の真下あたりだ。
「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと
「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと

窓口で入館チケットを提示すると内部に通してもらえるのだが、このチケット受付は予約時間の10分ほど前から始まる。中に入ると、まず「地底の太陽ゾーン」という展示スペースがあるのだが、早めに入っておけばおくほど長くこのスペースを観覧できるのでおすすめだ。

「地底の太陽ゾーン」には万博終了後に行方不明となった巨大なオブジェ「地底の太陽」を復元したものがドーンと設置されており、その周りにはさまざまな民族の手による仮面と神像の数々が並び、さらにそこに映像が投影される。めちゃくちゃかっこいいエリアなので、ぜひ少しでも長く見ておこう。

ここからいよいよ「生命の樹」というオブジェが展示されている塔の内部へと入っていく。同時間帯の観覧者が15名ほどずつのグループに分けられ、スタッフの方の説明を受けながら、高さが41メートルもある「生命の樹」の周りをめぐるように階段を上がりながら観覧していくことになる。公式サイトには「車いすの方、乳幼児(4歳未満)の方はエレベーター利用とします。また、歩行が困難な方、体力に自信のない方もエレベーターの利用が可能です」と記載がある。エレベーター利用には別途予約が必要とのことなので、利用したい方は事前に問い合わせておこう。

ちなみに塔内は撮影禁止なのでこのチケットの写真から雰囲気を想像してほしい。
「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと

というか、実物を見たらきっとその迫力に驚かれると思うので、入館してからのお楽しみにしていただきたい。

前述の通り、なにせ入館時間には30分間という限りがあるため、かなりテキパキと見ていく感じだ。スタッフの方が「ではそろそろ階段をのぼっていただきます!」と声をかけてくれるので、それに従って進んでいく。個人的にはかなりあっという間に感じた。ぼーっとしているとすぐに時間が来てしまうので神経を集中させて見ていきたい。

「生命の樹」は、この地球上に原初の生命が誕生してから人類へと進化していく過程を表現したもので、さまざまな生き物を形どったオブジェが樹に絡みつくように展示されている。高さが12メートルもある巨大な恐竜なんかもいたりする。オブジェのほとんどは今回の再公開にあたって大規模な修復を行ったものだというが、中にはあえて当時のまま劣化した状態で残されているものもある。

また、圧巻だと感じたのが太陽の塔の“両腕”の内部の機構である。「分子構造」を思わせるような骨組みが、まるで宇宙船の中のような雰囲気でかっこいい。万博開催時は右腕の中をエスカレーターが通り、そこから屋根内の展示スペースへ出られる仕組みになっていたというから驚く。

ポイントその6「観覧終了後に行ける塔内のグッズショップが見逃せない」


感動しっぱなしの観覧時間が終了すると、観覧時に上がったのとは別の退出用の階段を降りて出口へ向かうことになるのだが、出口の手前にはグッズショップがあり、さまざまな「太陽の塔」グッズが販売されている。

塔内部の模様をくまなく撮影した写真集、ポストカードやTシャツなど30種類ほどのグッズがギッシリと並んでいる。中でも注目なのはブロンズ彩色された「太陽の塔フィギュア」だ。購入は一人一体までで、塔内にあるこのショップでしか販売されていない。全部で2018体しか作られていない貴重なものだとのことなので、ファンの方は押さえておきたいところだ。

ショップ内での買い物は、次のグループの方が観覧を終えるまでの短時間で行う必要がある(特に閉園間際の時間に観覧すると買い物時間は数分程度しかない)。ここでも機敏に行動しなければならないので注意してほしい。

以上、細かい点についてまだまだ書きたいところもあるのだが、とにかく、内部の観覧を終えての率直な感想は「よくぞ大変な修復作業を乗り越えて公開してくれた!」というところに尽きる。見ていただくと分かると思うのだが、48年間放置状態だったあのような大規模なオブジェを安全に観覧できる状態にまで修復していくのは並大抵のことではなかったと思う。

また、館内の音楽も当時のままだったり、その音楽を反響させるために特殊な構造で作られていた壁も一枚ずつ修繕したり、細部までとことんこだわったのが伝わってくる。万博当時にこれを見た人の感動を時を超えて共有できるような、素晴らしい体験だった。

ちなみに私が観覧したのは公園が「万博記念公園桜まつり」という春のイベントにあわせて21時まで開園しているタイミングだったため、普段なかなか見ることのできない夜の「太陽の塔」を間近に眺められたのも嬉しかった。
「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと

これまで何度となくこの公園に見に来ていた「太陽の塔」。これから眺める時は「あの中はああなってるんだよなー」と想像しながら楽しむことができるのが大変嬉しい。
「太陽の塔」内部公開、30分の見学時間を上手に使うため知っておきたいこと

今は混雑している予約状況も徐々に落ち着いてくるかと思うので、ぜひ機会があれば塔の内部まで足を運んでみてほしい!
(スズキナオ)

※2018年4月25日追記 初出時、予約開始時間の記述に誤りがありましたので、該当箇所を修正しました