
この芋煮会を東北以外の地域でも、コミュニケーションイベントとして広げていこうという動きがある。芋煮会は今の日本で希薄になりがちな、人と地域のつながりを作る、大切なポイントになりうるという。芋煮会の魅力とは何なのか? 全日本芋煮会同好会でお話をうかがった。
――芋煮会が今の日本に必要な理由とは何ですか?
芋煮会には「持ち寄る」「みんなで作る」「分け合う」というコミュニケーションの重要な要素が集約されています。各地で開くことによって、人と人、地域と地域のつながりが活性化されます。例えば以前、年配者が多く集まる東京・巣鴨で行われた芋煮会をお手伝いしたことがありました。巣鴨には、若い頃に東北から東京に出て来た人も多く住んでいて、芋煮会をしていると、そういう方々が懐かしがって声をかけてくれます。芋煮会は、地域とのつながりが希薄になりがちな年配者と、コミュニティをつなぐ架け橋になれたのです。また全日本芋煮会同好会は、東日本大震災をきっかけに、日本を元気にしようというイベントの中で生まれました。災害が起きた時の炊き出しとしても、芋煮会は1つのスタイルになれます。

――芋煮といっても各地で味付けはさまざまなので、レシピがぶつかったりしませんか?
芋煮会というと、毎年山形市でクレーンを使い巨大鍋をかき混ぜるような大規模な芋煮会を想像する人もいると思いますが、私たちの芋煮会は1つの鍋で全員分は作りません。
――芋煮の味にはそれほどこだわっていないということですか?
いえ、1つの味付けにこだわらないだけで、「芋煮ラボ」と銘打って、レシピ研究はかなり本格的に行っています。オリジナルレシピを作る試みもしています。レシピ開発以外にも、芋煮をみんなで作れて、芋煮会のノウハウを他で教えることができ、コミュニティとの接点を作れる「イモニスト」を、東京五輪がある2020年までに1000人養成することを目標にしています。
さらに国内だけでなく英語などでも発信し、将来的には芋煮を「Imoni」として海外で通じる日本語にしたいです。海外各地でもそれぞれの地域でアレンジされた芋煮が広まったらうれしいです。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、じつはその文言の中に「芋煮」という言葉も入ったんですよ!

――東北以外の人にとって芋煮会は敷居が高いですか?
全く高くありません。私たちの会でも、メンバーは全員が東北出身者というわけではありませんし、名称にも「全日本」と付けているように、日本中で芋煮をやっていきたいと思っています。
9月は、前述した山形で行われる「日本一の芋煮会フェスティバル」が開かれるなど、芋煮会のトップシーズンが到来します。東北以外の人も、今秋はぜひ河原で芋煮会を開いてみてください。鍋を囲み、食と人をともに煮込むことで、皆がつながる良い機会になるはずです!
(加藤亨延)