「遊びと言ったら、ゲームばっかり。公園に行っても結局ゲームしてるんだから!」なんてお母さんたちのお小言を聞く機会、ありませんか。

確かに、自分たちが子どもの頃は、秘密基地を作ったり、木に登ったり、ただ泥団子を日々磨きまくってカチカチにしたり、ひたすらおしゃべりして過ごしたもの。
現代っ子って、モノがないと遊べなくなってるの? 精神科医で「ゆうメンタルクリニック」総院長の、ゆうきゆう先生に聞いた。

「昔から物を使って遊ぶことが当たり前になっていると、どうしてもそういったことは起きてくると思います。『あれが欲しい』と言われて買い与えれば、確かに子供は喜びますし、すぐに遊び始めますよね。また、ほとんどの場合は『こうやって遊ぶのよ』と大人がついて遊ぶでしょう。しかし、それでは、与えられたもので教えられた通りに遊ぶことしかできませんよね」

本来子供たちは「大人が思いつかないような遊び方をする」ことで想像し、創造する力を育ててきたもの。

だが、同時にそれは危険なことでもあった。
「打ち上げ花火を武器に戦争ごっことか、段ボールを駆使して秘密基地を作るとか、そういった失敗や自分で何かを工夫しながら大きくなることで、物事に対して『予測』や『想像』をすることができるようになります。ゲームでは、少なくともソフトに関してはマニュアル通りの遊び方しかできないし、用意されたストーリーの中でしか進行していかないもの。なかには、ゲームの液晶など構造に興味を持つ子もいるかもしれませんが、ただマニュアル通りに遊んでいるだけではそういった事にすら意識が向かないものです」

自分自身なども、空き家に勝手に入って遊んだり、落とし穴を作ったりしては、近所の人に物凄く怒られたりしたものだが、そういう悪いこと・危ないことを我が子は一切しない。大変ラクで助かるが、いつも先回りして注意してしまったり、過保護に見守りすぎていたりする面もあるのは否めない。
「最近の新社会人は『言われたことしかしない(出来ない)』といった声を聞きますが、もしかしたら、与えられた業務以上のことについて思いを巡らせる『想像する力』自体が育っていないのかもしれませんね。
『これをしたら、こうなるかも』という予測・想像力は、社会での仕事や勉強といった場面での応用力にもつながるし、人と関わる上で相手の気持ちや痛みを理解することにもつながっていきますから、そういったことに慣れすぎないでほしいなとは思います」

もちろん「遊び方だけの問題」ではないだろうし、教育やしつけといった大人が教えられる部分も含めて、子供たちが感性を育てられる環境を作っていくことも大切なのではないかと、ゆうきゆう先生は言う。
「タレントの千秋さんは子供の想像力(創造力)を育てるために『すぐに買い与えるのではなく、工夫してなんでも作る』ことを娘さんに教えていると聞いたことがあります。『足りない部分を想像して埋め合わせる』というのは想像力を育てる第一歩だと思いますので、お子さんやお孫さんがいらっしゃる方は『ものを与えて完結する』のを一度控えてみるのもいいのではないでしょうか」

「いまの子どもたちは」と批判する前に、そうさせた原因・環境をふり返ってみることは必要かも。
(田幸和歌子)

■ゆうきゆう 精神科医 著書多数。
ゆうメンタルクリニック総院長(上野院 03-6663-8813 上野駅0分)。(池袋院 03-5944-8883 池袋駅1分)。
新宿院 03-3342-6777  新宿駅0分)。(渋谷院 03-5459-8885 渋谷駅0分)。(秋葉原院 03-3863-8882 秋葉原駅0分)/池袋西口院は10月開業。心安らげるクリニックとして評判が高い。