一見、かわいらしいフィギュアのように見えるが、全て公園の遊具を撮影したものだ。各地に存在する遊具を、幻想的な写真に撮影している写真家、木藤富士夫さんにお話を伺った。


公園遊具を幻想的に撮り続ける木藤富士夫氏の気を遣いすぎる撮影秘話

ドラゴン(品川区子供の森公園)

公園遊具を幻想的に撮り続ける木藤富士夫氏の気を遣いすぎる撮影秘話

電話(柏市柏公園)

NTTが『電電公社』だった時代に造られたと見られる。後方部分はすべり台になっている。
「照明を当てるのが非常に難しかったです。ちなみに、写真はプッシュホン型ですが、ダイヤル型もあります」

公園遊具を幻想的に撮り続ける木藤富士夫氏の気を遣いすぎる撮影秘話

オニ(立川市錦第二公園)

通称「オニ公園」。この公園の位置が立川の鬼門に当たることから鬼をモチーフにした滑り台が設置されたと言われている。

公園遊具を幻想的に撮り続ける木藤富士夫氏の気を遣いすぎる撮影秘話

ハト(中野区みはと公園)

●ペンキが剥げているくらいの方が良い
公園の遊具といっても新旧さまざまだが、富士夫さんが撮りたくなるのは少し年季が入ったものだという。

「例えば、タコの形をした遊具を置いている公園が多数ありますが、形が違ったり、ペンキのはげ具合が違うと雰囲気が違って見えます。写真を撮る時は、ペンキが塗りたての遊具だとテカテカし過ぎて不自然に目立つから、ペンキが所々剥げているぐらいの方が趣があって好きです」

公園遊具を幻想的に撮り続ける木藤富士夫氏の気を遣いすぎる撮影秘話

タコ(葛飾区堀切東公園)

●恐怖!! 暴走族がやってくる
木藤さんのような幻想的な写真を撮るのは大変だ。ストロボを使って一発撮りで終わりという訳にはいかない。
「一度で撮るのではなく、照明の位置を何度も変えて撮ったものを合成しています。撮影する前に、立体感を出すために照明の位置をどうするかといったことなどを考えてから撮影します」
この撮影はかなり手間暇がかかるのだが、木藤さんは一人で行っている。
「アシスタントさんがいれば、少しは楽になるのかもしれないんですけどねぇ~(笑)」

撮影のベストシーズンは冬。
撮影は夜に行うため、日が暮れるのが遅い夏よりは冬の方が撮影にかけられる時間が長くなる。
「ベストな時間は7時から9時です。それを過ぎると、不審者に思われる可能性がありまして、近所の人に『何をやってんだ』と声をかけられたり、お巡りさんに職務質問を受けたこともありました(苦笑)。遠くで暴走族が走っている音が聞こえると、こちらに向かってくるんじゃないかと心配になり、恐怖で逃げ出したくなります。しかも、冬は寒いし……」
暴走族も困るが、逆に公園が静かすぎるのも困るという。
「団地内にある公園は、ものすごく静かなことがあります。
以前、滑り台のそばになる撮影するには邪魔な岩を投げたら、思いのほか『ドスン』という大きな音が団地じゅうに響いてしまって、『誰かが飛び降りたんじゃないか』と、いろいろな人がベランダから顔を出してきたことがありまして……。その時は通報されるんじゃないかと大いに焦りました(苦笑)」

いや、寒かったり、まわりに気を使ったり、撮影が大変だったり、暴走族を警戒したりするくらいならやらなければいいんじゃないか……と思ってしまうのだが……
「それでも、公園のファンが少しでも増えたらいいな~と思ってやっています。作品集には公園の場所も掲載しているので、ぜひ足を運んでいただければ嬉しいです」
う~~ん、なんて良い人なんだ。木藤さんはもっと地方の公園にも行きたいそうだ。木藤さんが公園の遊具を撮影しているのを見かけても、そっとしておいてあげてください。
(取材・文/やきそばかおる)

木藤富士夫さんのサイト
2015年2月1日(日曜)に開催される『コミティア111』(東京ビッグサイト)にも参加。
(ブースはN08b)
公園遊具を幻想的に撮り続ける木藤富士夫氏の気を遣いすぎる撮影秘話

『公園遊具』Vo.1 Vol.2 『屋上遊園地』の写真集も頒布。
「今年も『公園遊具』と『屋上遊園地』の新刊を定期的に販売するとともに新たな作品も発表して行きますのでご期待のほどよろしくお願いいたします!!」(木藤さん)