現在はほぼ絶滅した文化となっているが、昔の芸能界はデビュー時のアイドルや歌手にキャッチフレーズを付けるのが通例だった。ただし、和田アキ子の「和製リズム&ブルースの女王」や後藤久美子の「国民的美少女」などのわかりやすいフレーズはほんの一部で、その大半は「?」と首をかしげるものばかり。
その良くも悪くも「ザ・芸能界」を感じる独特なセンスの数々、ぜひご覧いただきたい。

未来を予言する?問題だらけのジャニーズ編


シブがき隊「YMF 正面突破」
YMFとはヤックン・モックン・フックンのこと。2010年、『スシ食いねェ!』のアンサーソング『そば食いねぇ!』で悪びれることなくソロデビューしたり、堂々と浮気を重ね、結局離婚に至ったりと、正面突破しまくるF氏には少なくともピッタリのようだ。

少年隊「日本発、世界行」
『ザ・ベストテン』ではデビュー曲『仮面舞踏会』をラスベガスから中継。目標は世界進出だったようだが、今のところその兆しはない。解散はしていないので、世界に羽ばたく日を気長に待つことにしよう。

男闘呼組「ジャニーズ事務所のおちこぼれ」
解雇された高橋一也(現・和也)、大麻所持により逮捕された成田昭次、肥満に悩む前田耕陽。
たしかにおちこぼれかも知れないが、岡本健一の息子・圭人はHey! Say! JUMPで活躍中だ。

光GENJI「超新星からのメッセージ」
大沢樹生が元妻・喜多嶋舞との息子との間に「親子関係不存在」であることの確認の裁判をしたり、赤坂晃が2度の覚醒剤所持事件を起こしたり、山本淳一が遠山景織子との間に子供が誕生するも未入籍のまま破局したりと、超新星からはシビアで笑えないメッセージが多い。

常識の概念にはとらわれない編


芸能人デビュー時の意外なキャッチフレーズ 福山雅治「いなかもんばい」鬼束ちひろ「鬼、走る」
ピーター「GOLDEN☆BEST」

ちあきなおみ「苗字がなくて名前がふたつ」
泉ピン子もある意味あてはまってしまうかも? 松尾スズキなら「名前がなくて苗字がふたつ」だろうか? ちなみに、ちあきなおみのもう一つのキャッチコピーは「魅惑のハスキーボイン」。……ちあきなおみは怒らなかったのだろうか?

ピーター「アポロが月から連れてきた少年」
NASAもびっくりの衝撃の事実。矢追純一氏やニラサワさんはご存知だろうか?

X(現・X JAPAN)「時代が変わる。今、青い血の雨が降る」
医学界の常識も変わった。

GLAY「限りなく漆黒に近い、純白」
色彩の常識も変わった。


実は的を射ているかも?編


芸能人デビュー時の意外なキャッチフレーズ 福山雅治「いなかもんばい」鬼束ちひろ「鬼、走る」
福山雅治「伝言」

中森明菜「ちょっとエッチな美新人娘(ミルキーっこ)」
「美」=「み」、「新人」=「ルーキー」、「娘」=「こ」。これで「ミルキーっこ」と読ませるセンスに脱帽。「エッチな」は卑猥な意味ではなく、少し大人びた感じを出すために付けた模様。『少女A』や『セカンド・ラブ』など、デビュー当初のヒット曲のイメージにピッタリな気もするが、どう考えたって誤解を招く表現である。

酒井法子「おきゃんなレディ」
おきゃんとは、活発でやや軽はずみな女性を指す言葉。「うれピー」「いただきマンモス」などの「のりピー語」を駆使していたデビュー時はまさに「活発」で元気いっぱいのイメージ。
2009年の覚醒剤所持・使用事件による逃走から逮捕に至る一連の大騒動は、「やや軽はずみ」では済まない気もするが、相変わらずのおきゃんなレディっぷりを印象付けた。

大事MANブラザーズバンド「埼玉のサザン」
厳密には、埼玉の中でもボーカル立川俊之の出身地から「草加のサザン」となるらしい。潮の香りならぬ、せんべいの匂いを感じそうなバンドである。人気、実績、海……それ以外にも色々足りなさすぎな気もするが、結成時点でのメンバーが6人で紅一点がキーボードなのは共通だし、その高い志は買いたい。目指せサザンと「信じ抜くこと」、「それが一番大事」なのだから……。(でもすでに解散済み)

福山雅治「いなかもんばい」
今の洗練されたイメージとは程遠いキャッチフレーズであるが、デビュー時点では田舎者イメージもうっすら残っていたようだ。

長崎から夜行列車で上京した18歳の福山少年。列車内では、バイクを売って工面した全財産20万円を盗まれないように靴下に隠していたそう。
確かに田舎者である。
新宿の宅配ピザ屋でバイトをするが、長崎弁が店のイメージに合っていないという理由でクビになってしまう。
確かに田舎者である。
生活に困る中、ティッシュペーパーにマヨネーズを付けて食べていたこともあるそうだ。

田舎者とかそういうレベルの話じゃない気もするが、その甲斐あって(?)現在はキユーピーマヨネーズのCMに絶賛出演中である。

鬼束ちひろ「鬼、走る」
2010年の同棲中の男性に殴られて全治1ヶ月の重症を負った事件や、2012年のツイッターでの和田アキ子や島田紳助への殺害予告などで世間を騒がし、服装もメイクもえぐいくらいにド派手だったこの時期は、ある意味「鬼、走る」にふさわしい状態となっていたかも。
でも、デビュー時の透明感のある清楚な女性のイメージからしたら違和感あるのでは? ただ安直に苗字から取っただけでは? と思いがちだが、実は自伝『月の破片』において、幼い頃、生きた金魚の目玉を食べたなど、生来の暴れん坊であることを告白している。
事務所がその本質を見抜いていた可能性は高いが、あまりに怖すぎるキャッチフレーズである。

事務所の偉い人が思いつきで言った一言が採用されてしまったのでは? みんなで散々アイデアを出しまくるがどれもピンと来ないままにてっぺん(深夜0時)を越え、さらに迷走を重ねて迎える夜明けの時間帯、変なテンションの中うっかり決定しまったのでは? と思うようなキャッチフレーズたちに、昔の芸能界の底知れない怖さを実感する次第だ。
ちなみに、「千年に一人の美少女」などと言われることが多いアイドルの橋本環奈だが、公式キャッチフレーズは「神様!仏様!かんな様!ちっちゃいけど態度はデカイw」。
芸能界の底知れない怖さは現在進行形のようである……。
(バーグマン田形)

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