受験シーズン真っただ中。

東京の合格祈願スポットといえば、「湯島天神」が有名で、他には「亀戸天神社」「谷保天満宮」などが挙げられるが、そうした「学問の神様」とは別の理由で受験生に人気のスポットがある。


墨田区両国にある「回向院」だ。

理由は、鼠小僧次郎吉のお墓があること。
鼠小僧は実在の人物で、「甲子夜話」によると、武家屋敷にのみ押し入ったために、庶民から義賊扱いされたそう。
それが後に江戸時代の戯作者・河竹黙阿弥が「権力者である大名家に侵入し、庶民に盗んだ金を配る」という鼠小僧の物語を書いたことで、人気となった。
本来はお金に関係している人物なのに、受験生に注目されるようになった理由は、鼠小僧がどこにでも「するりと入れる」ことから。

1月某日、実際に行ってみた。
JR両国駅西口から徒歩3分。ちょうど大相撲の1月場所中で、道中、何人もの力士とすれ違う。それだけでなんだか縁起が良い感じもある。

受験生注目の「するりと入れる」両国・回向院に行ってみた


門をくぐり、いちばん奥にあるのが、鼠小僧の墓(教覺速善居士)で、すぐ手前には「お前立」という白い石があり、削って持ち帰って良いことになっている。

受験生注目の「するりと入れる」両国・回向院に行ってみた


受験生注目の「するりと入れる」両国・回向院に行ってみた


「受験生に人気」と聞いていたので、大変な行列などを想像していたが、案外静かなもので、それでも受験生の両親らしき人たちの姿がチラホラ。

お前立のまわりには小さな石と歯ブラシが置かれていて、みんな真剣な顔で小さな石を片手に持ち、お前立を削る→粉状に欠けた破片を紙などに集めて持ち帰っていた。


受験生注目の「するりと入れる」両国・回向院に行ってみた


自分も、用意していった薄紙で粉状の石を受けとめ、同じく持参の小袋に入れてもらってきた。

受験生注目の「するりと入れる」両国・回向院に行ってみた


それにしても、いつから受験生の人気スポットに? 回向院に聞いてみた。
「受験生には昔から人気があるのですが、おそらく注目されるようになったのは、戦後の受験ブーム以降だと思います。とはいえ、受験専門ではありませんので、いらっしゃる方はさまざまで、もともとはばくち打ちの方や、鼠小僧が役者だったことから役者さん、商売ということで繁華街の方や水商売の方なども多いです。時期によっても違っていまして、年末は年末ジャンボの祈願、新年になると受験生が増えますね」

ちなみに、回向院では特に「合格祈願」をPRしたり、合格御守りなどを大々的に売ったりしていない。受験生に注目されるようになったきっかけについては、
「もともと庶民信仰ですから、自然発生的なものだと思います」とのことだった。


余談だが、回向院は四代将軍家綱公によって建立されたお寺で、今の門は昔の裏門にあたるよう。また、かつてはもっと広大な敷地で、回向院の敷地内で江戸時代に勧進相撲が行われ、後に国技館が、回向院の敷地内に作られたそう(国技館跡地は現在、区の施設になっている)。

また、回向院の敷地内には、動物の供養をするところや、

受験生注目の「するりと入れる」両国・回向院に行ってみた


かつての名力士が祀られたという、相撲協会が昭和11年に建立した「力塚」の碑もある。

受験生注目の「するりと入れる」両国・回向院に行ってみた


受験生も、商売人も、力士も集う回向院。散歩がてら訪ねてみては?
(田幸和歌子)