ネットでは数多く『ドラえもん』の名言がまとめられているが、意外にも名言集として書籍になっているものは多くない。そこで登場したのがドラえもん初のビジュアル名言集『ドラえもん名言集「のび太くん、もう少しだけがんばって」』だ。

編集を担当された小学館・片山さんにお話を伺うと「大人に向けた名言集」を作りたかったという。
「てんとう虫コミックス『ドラえもん』を、大人になってあらためて開いてみると、子どものころは気づかなかった、心を打つ深いセリフがたくさんありました。『流れ去った時間は二度とかえってこないんだ!!』『最初のおくり物はきみがうまれてきてくれたことだ。』など、大人になったからこそわかる"言葉の重み"に気づいたのです。まわりを見渡すと、子どもの頃に『ドラえもん』を読んだ人たちも、自分と同じように大人になっていて、今ならこの思いを共有してもらえるのではないかと、この企画を立ち上げました」
さらに言葉はビジュアルと一緒に掲載されていると、より深く心に響くものだ。本書は「ビジュアル名言集」と銘打っているように、ページをめくるたびに印象的なイラストが目に飛び込んでくる。

「名言とともに、藤子先生の絵がもつ力にも、ぜひ注目してほしいと、挿絵にするコマの抽出にもこだわりました。通常ならば、その言葉が書いてあるコマを掲載しますが、あえてまったく違う話から、言葉に相応しいであろうイラストを持ってきています。そのイラストも、コマで使用されている大きさの3~4倍に拡大されているものもあり、先生の筆使いをより身近に感じられます」

本書の面白い部分はそこにある。
「親しい人のお祝いや、送別などの旅立ちの際、気持ちを乗せて手渡してもらえるような本にしたいと考えました。そのため、おしゃれな本になるよう、デザインにこだわりました。ドラえもんを思わせるブルーの紙を本文に使い、連載開始1回目のドラえもんが印刷された黄色(=鈴の色!)のカバーで包みました」
また、手に取った際はぜひ黄色いカバーをはずしてみて欲しい。ちょっと不思議な装丁になっている。楽しみ方がたくさんある本書を大人になった今めくると、ドラえもんにわくわくしていた子どもの頃がよみがえってくるかもしれない。
(上村逸美/boox)