
インターネットはスマホで利用するのが当たり前の「スマホネイティブ世代」の大学生の中には、パソコンを使うのが苦手な人もいるようだ。
東京工芸大学マンガ学科で教える伊藤剛さんが、手書き原稿を携帯電話で撮影した画像ファイルでレポート提出する学生が出てきたと、Twitterに投稿している。
「写メレポート・ショック」
伊藤さんのツイートによると、一昨年までは「ほぼ全員パソコンを使える感じ」だったが、スマホ世代になってから「手書き原稿を写メった画像ファイル」を送ってくる学生が現れた。そこで昨年度からレポート提出はワードなどのファイルのみと指定したという。
大学新入生に対して、
「『スマホで足りているから、パソコンなど不要』と考えているひとは、社会から脱落するくらいの覚悟でいたほうがよいと思います。フリック入力で10000字を苦も無く書けるのならば話は別ですが、そうではないでしょう。とくにウチのような芸術系はパソコン必須」とTwitterで呼び掛けている。
これに対して、「どこも一緒だなあ。『写メレポート・ショック』は僕も一昨年の前期レポート提出時だった」「うちは数年前から散見されるな。手書き写メのレポート」といった反応が出ている。大学生が画像データでレポート提出するのは、東京工芸大学だけの特殊な例というわけでないようだ。
文字情報を画像化して共有するのは、Twitterでもよく見かける光景だ。ツイートにURLを記入せず、スクリーンショットを撮ってシェアする。PCの利用経験があまりなく、スマホでのくだけた情報発信やコミュニケーションの作法しか知らない学生が、大学のレポートでも同じように振る舞っているのだろうか。
総務省の情報通信白書(2015年度)によると、20代以下に最も利用頻度が高いICT端末をたずねた結果、スマートフォンと回答したのが約6割。PCの約3割と大きく差がついている。
PCでのフォーマルなメールのやりとりや、文書作成経験がないまま大学に進学する人も少なくないため、近ごろは基礎的な電子メールの送り方や、アカデミックライティングを指導する大学もある。例えば、ウェブ上に公開されている東京外国語大学の「大学生のためのアカデミックライティング」の解説は非常にていねいだ。メールには「名前」を書こう、というところから始まる。
パソコンのアドレス宛にメールを送る場合、相手が自分のメールアドレスを「アドレス帳」などに登録していないと誰からのメールかはわかりません。メールアドレスが表示されたとしてもそれだけでは送り主を特定できません。そのため、「自分の名前を書くこと(署名)」は必須です。
PCメールに慣れている世代からすると当たり前の内容だが、スマホのメッセージアプリが主流のスマホネイティブ世代にはかなり初歩から説明しなければいけないほど、前提が変わってしまったようだ。
(高田タケシ)
編集部おすすめ