パリの立ちション対策用小便ボックスが不評で移転に 使用感を確かめてみた
前面にあるU字型の部分が便器

立ちション用トイレ「ユリトロトワール」がパリの高級住宅地サンルイ島に設置され議論を呼んでいる。目隠しも何もない小便用トイレが美観地区の道端にあると、雰囲気としてふさわしくないという考え方からだ。


ユリトロトワールとは、花壇と男性用小便器を組み合わせたトイレ。便器部分の奥にある藁の乾燥素材に尿を吸収させることで、配管の必要なく運用できる。尿を吸収した素材は堆肥として加工され、上段の花壇の土壌として戻される。立ち小便が頻発する繁華街を中心に、現在ユリトロトワールはパリ市内4カ所に導入された。サンルイ島のものは4カ所目だ。
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ユリトロトワールのことを知らず、用を足す男性のイラストもなければトイレとは分からない


確かに住民はトイレを望んでいたけれど


仏パリジャン紙が報じた島内河岸部住民の代表者の話によると、そもそも島内へのトイレの設置は、住民にとって行政に長年要望してきたものだった。その結果、行政はユリトロトワールを設置した。ところが、その外観と目につきやすい場所から、住民の不評を買うことになった。結果、サンルイ島のものは8月に導入されたばかりだが、ユリトロトワールを販売するFaltazi社によれば、行政は9月上旬にユリトロトワールを現在の場所より目立たない所へ移動するという。

繁華街ではないサンルイ島にトイレ対策が必要なのは、夏場はここがパリでも有数の飲み会スポットになるからだ。夏のセーヌ河岸にはピクニックを楽しむための人が多く集まる。ビールやワイン、軽食を持ち込み、飲食しながら夏の長い太陽を楽しむ。パリは外食の値段が高いため、特に若者にとってピクニックはとても経済的。
定番のアクティビティになっている。
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晴れた夜のセーヌ河岸は大勢の人でにぎわう

お酒を飲むと当然もよおすが、トイレがないため結局人々は立ちションをする。パリでは立ち小便に対して68ユーロ(約8800円)の罰金が課されているものの、トイレが十分にあるわけではないため道端で用を足す人は後を絶たない。夏の晩などは、橋の下など影になっているところで立ち代わり酔っ払いが小便をして、悪臭を放っている。男性ほどではないが、女性も縦列駐車している車と車の間の物陰で用を足していることがある。

パリ市内各所には、1回使用するごとに全自動でトイレの個室内部が、水で丸洗いされる無料トイレが点在している。しかしこの従来型のトイレではなくユリトロトワールが選ばれたのは、ここが昔ながらの街並みが残る地区であり、トイレを設置するスペースと水回りの配管を整えるのが難しかったからだ。ユリトロトワールであれば(男性用に限られてしまうが)これら条件を気にせず、トイレを設けることができる。
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小便は構造下部の乾燥素材に吸収される



ユリトロトワールの使い心地はどうか


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すぐ近くにはベンチが

実際にユリトロトワールの使用感を確かめてみた。筆者の身長は173センチメートル。便器の高さは筆者の身長で、ちょうど良いか、少し高いかなと感じる高さだった。筆者より背が低めの人は用を足すのには不便を感じるだろう。
フランス人男性の平均身長は175.6センチメートルで筆者より一回り大きい。股下も筆者と比較してフランス人の方が長いはずだから、平均的なフランス人にとってユリトロトワールの高さはちょうど良いか、少し余裕があるということになる。

ユリトロトワールのすぐ横には、セーヌ川の景色を眺められるベンチがある。昼間はそこで観光客が座っていたり、散歩途中のお年寄りが日向ぼっこをしている。セーヌ川が眼前に流れているため景色は申し分ないのだが、そのすぐ隣で用を足すのに落ち着かない人も多いだろう。夜であればまだ周りも暗く、昼間より気にならない。ただし、既述したように9月には場所が変わるため、この景色も見納めとなる。
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ユリトロトワールから見える景色

Faltazi社に聞いたところ、ユリトロトワールは形やサイズ別にいくつかのモデルを展開している。サンルイ島に設置されたものはPinte(パント)型のもの。Pinte型は180回の排尿ごとに下部の乾燥素材を交換する。Pinte型の他には容量を大きくしたStout(スタウト)型などビールを連想する名前がつけられたモデルや、建物などの隅に設置することを想定したCorner(コーナー)型もある。それぞれ容量別に135〜270回の排尿に対応できる。

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レゴのユリトロトワール

さらにレゴ製のユリトロトワールもある。これはトイレとしては使えないが、興味を持った人は話の種に作ってみてもいいかもしれない。
(加藤亨延)
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