「料理を好きな男は多いけど、後片付けが好きな男はいない」と耳にしたことがあるけど、図星だと思います。筆者もいわゆる“皿洗い”が、家事の中で最も億劫かもしれない。
とは言え、やらないわけにはいかない。できるだけ汚れの落ちやすい洗剤があると、助かりますよねぇ。……ちょっと待て。スポンジの方にも気を使ったら、汚れの落ちは増すのではないか?

「スポンジ博士」と「スミちゃん」(コスプレ)によるセミナー


ポスト・イットなどオフィス文房具を主に手掛ける3Mが、ブロガーに向けた「ざ・3Mセミナー」なるイベントを展開し、近ごろ話題になっています。過去に数度開催されており、今までに以下のようなテーマのセミナーが開かれている模様。
・「高視認性安全服」(工事現場でガードマンが着る服)や「防護服」、そして溶接時に着ける「防護面」
・歯磨き粉やクリーニング製品に使用される「フッ素」
・グラスや水垢のついた鏡をきれいにする「研磨剤」
要するに、同社製品に活かされている技術をおもしろ形式で紹介する体験型セミナーが好評を博しているのです。

そして昨日は、その名も「スポンジ博士に聞く、スコッチ・ブライト製品!」が開催されました。おうちのトータルクリーニングソリューションを提供する3Mのブランド「スコッチ・ブライト」の歴史や、ユニークな技術・製品に触れるおもしろ授業です。
これに、筆者も伺ってきています。というわけで、スリーエム ジャパン本社(東京都品川区)に到着!
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

「スコッチ・ブライト」は1958年にアメリカでスタートし、現在ではキッチンスポンジからお風呂のクリーニング用品、衣類のケアアイテム等、家の中のトータルクリーニングソリューションを提供するブランドです。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

日本国内では、同ブランドのマスコットとして「スミちゃん」なるキャラクターが生まれ、愛されています。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

というわけで、セミナーの司会を務める3Mコーポレート コミュニケーション部・鵜飼春菜さんもこのような格好に……。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

そして、スコッチ・ブライトの製品開発などを担当しているラボの原井さん。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

この方が、いわゆる「スポンジ博士」。スコッチ・ブライト製品が並んでいるのを見ながら「思い入れがある物ばかりで……」と、その表情は感慨深そう。


「スプリング効果」で、金属を削ることなく表面をピカピカに


今回のセミナーで注目したいのは、「不織布」です。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

「不織布」とは、編んだり折ったりしないで作られた布のこと。3Mの中でも特に重要な技術で、たくさんの物に使われています。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

有名どころでは、「研磨剤」として大きな業務用の鍋を洗ったり、車の中にある「吸音材」としても活用されたり、工業用液体のろ過に使われるフィルターになったり……。

そんな中でも、不織布を使ったロングセラーとしてキッチンスポンジ『抗菌ウレタンスポンジたわし S-21KS』には特に注目です。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

1966年に発売されたこの製品。一番最初は黄色い部分がないものだったらしい。長く愛されているので、グッド・デザイン賞の「ロングライフデザイン賞」を受賞しています。
拡大鏡で不織布面を見てみると、こんな感じ。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

模式図を見てみましょう。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

細長いニョロニョロっとしたのが繊維で、繊維と繊維をつなげる接着剤を使ってまとめている。そこに白いつぶつぶがあり、これを「砥粒(とりゅう)」と呼ぶ。これが汚れを落としてくれるのです。要するに繊維と接着剤が構造を作って、磨きの働きは砥粒が行う。

なぜ、不織布を使ってお皿を洗うといいのか? というわけで、参加者に1人一枚ずつ10円玉が渡されたので、みんなで磨いてみましょう。まずは比較対象として、サンドペーパーで磨いてあげる。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

結果、表面は綺麗になっていきました。でも、同時に元の金属まで削ってしまっている。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

では、不織布で磨くとどうなのか?
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

不織布の複雑に絡み合っている構造が、“バネ”のように働くらしい。この「スプリング効果」によって、下の金属を削ることなく表面をピカピカにすることができるのです。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

不織布で10円玉を磨くや、参加者各々から「オォーッ!」と声が上がるほどドンドン汚れが落とされていきました!
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

もちろん、お皿などの食器類も「スプリング効果」によって綺麗にすることができるわけです。

続いて登場したのは、『ハイブリッド貼り合わせスポンジ HB-21K』。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

パッケージには「ハイブリッド粒子がこびりつきから油汚れまで」と記されていますが、「今の調理器具に合ったものを」という目的で開発されたスポンジだそう。大きい粒子がこげとかこびりつきなどをかき取り、小さく細かい粒子が茶しぶやくすみなどを落としていくのが「ハイブリッド粒子」です。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

続いては、『泡立ちゆたかスポンジ』の登場。商品名の通り、泡でやさしく洗いたい時に使うスポンジです。なぜそんなに泡立つのかというと、不織布とスポンジのバランスが良く、全体的にやわらかく、小ぶりサイズに仕上がっていて握りやすいから。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

「握りやすい=揉みやすい」ということで、泡を立てやすいということになる。また、非常にやわらかい不織布を使っており、汚れにピッタリ密着して繊維で油汚れをしっかり絡めとってくれるそうです。

汚れに応じてスポンジを変えると、落ち方が全然違う!


実は今回、参加者たちは各自で汚れたマグカップ等を持参しています。今まで紹介された3つのスポンジを用い、流し台代わりのプールでどれだけ汚れが落ちるか実際に試してみましょう!
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

まずは『泡立ちゆたかスポンジ』で、泡立ちを実感します。実際に濡らし、洗剤を付けて揉み込むと、すぐ泡泡になりました。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

あと、濡れた状態で揉むとやわらかさがより実感できました。このスポンジは研磨粒子が付いていないそうで、だからフワフワなんです。では、このスポンジでこすり、こげを落としてみましょう。……う~ん、全然手応えがない。表面がちょっととれるくらい。

こんな時に活躍するのが、『ハイブリッド貼り合わせスポンジ HB-21K』です。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

見てください、あっという間にこげが驚くくらいにドンドンなくなっていく!


鍋のお尻の部分に頑固な汚れや焼き焦げがつきがちですが、こういう時は『抗菌ウレタンスポンジたわし S-21KS』が打って付け。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか


「オォーッ!」と驚きの声が上がるほど細かい部分まで落ちていき、やってて楽しくなるほどです。
「何が言いたいかというと、ハイブリッドが最強というわけじゃないということ。汚れと洗う物(食器や鍋など)に合わせて適切なスポンジを使うことが、実は重要なんです。もちろん一つで何でもできたらいんですがそれは現実的ではなく、“傷つけないタイプ”と“汚れに強いタイプ”の2種類くらい使い分けてもらう方が、綺麗に洗えるんですね」(鵜飼さん)

活性炭により、洗剤を付けずにこげがゴッソリ落ちていく!


昔はステンレスのキッチンが主流だったが、今ではガラストップが流行中。またIHだとコンロが焼け焦げちゃったり、ガスコンロでも五徳に付いた汚れは気になります。
これを落とすのに便利なのは、この『ガスコンロ・IH用クリーナー』。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

4枚のスポンジがくっ付いており、ちぎって使える製品です。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

しかも、洗う際は水だけでOKだそう。なぜなら、中に活性炭(吸着効率が高い炭素)が含まれているから。
「活性炭は非常に油との相性が良く、吸着しやすいと言えます」(原井さん)
こげや油汚れよりも硬く、一方でガラストップなどのガラス素材よりやわらかいのが活性炭。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

硬さのバランスによってこげはしっかり落とせるし、それでいてガラストップは傷つけません。拡大鏡で覗いてみると、先ほどの『抗菌ウレタンスポンジたわし S-21KS』とは見た目が違うことがわかります。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

こちらの方が、ちょっと大きいかしら?

では、再び実践編。参加者全員の“焦げのプレート”が渡されたので、ほんのちょっと水に付けたこのクリーナーでこすってみます。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか


なるほど、油がゆるむ感じがします。洗剤を付けず、水だけなのに! このクリーナーは、五徳やグリルの掃除でも活躍する一品です。

焦げがつくような料理をしない人もいるでしょう。昔ながらの中華鍋を使う人もいるでしょう。フッ素加工されているフライパンを使う人もいるはずです。それぞれ焦げ付き度合いは全く違ってくるので、自分に合わせてスポンジを選ぶと自ずと快適になるということを学びました。

ところで。アメリカの3M本社はミネアポリスにあるらしい。ミネアポリスと言えば、ペイズリー・パーク。プリンスです。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

プリンス逝去が報じられた当日、3MはTwitterのアイコンをこんなものにしたそうです。
皿洗いのスポンジはなぜ削ることなく表面をピカピカにできるのか

セミナー内で放たれたこんなエピソードが、不意にメチャメチャ響きました。余談です。
(寺西ジャジューカ)