日本中を大いに沸かせてくれた、リオ五輪体操種目。
しかし、体操種目全てが終わったかに見えた8月18日の日本時間夜9時から、NHKBS-1で放送された『GALA』が、一部で絶賛されていたことをご存知だろうか。


「体操にもエキシビションがあったのか」


GALAとは、体操のエキシビションマッチのこと。
今回のメダリストや過去の五輪メダリストなどが出場し、体操、新体操、アクロバットの超高度な技術や芸術的な美しさを披露する。かと思えば、「吊り輪で水平状態のまま、両足で拍手」したり、「明らかに不自然な白髪のカツラ+シャツ・ネクタイ・スラックス姿で登場し、小芝居をした後、衣服を脱ぎ棄てユニフォーム姿できっちり演技」したりと、笑いもたっぷりだ。

エキシビションというと、フィギュアスケートの上位選手が行うものというイメージがあり、「体操にもエキシビションがあったのか」「体操のエキシビション、初めて見た」といった声がネット上には続出していた。

また、こんなにも楽しい催しに日本人が一人も出ていないことに対して「なぜ日本人は出ていないの?」という声も多かったけど、出場者はどんな基準で決まっているのだろうか。

トップ選手からチャイルド、ジュニア、高校生などの試合・練習まで多数取材・執筆を行う「体操・新体操ライター」の椎名桂子さんに聞いた。

「体操のエキシビションは、回数はそれほど多くないものの、アテネ大会など過去には何度かありました。
一方、新体操のほうは、世界選手権ではあまり行われませんが、ワールドカップでは意外とよく行われています。ただ、フィギュアスケートのように、毎回テレビで放送されるものではないですし、今回のリオ五輪のGALAのように、体操、新体操、アクロが一度に見られるような大掛かりなものはオリンピックくらいですから、大変珍しく楽しい機会だと思います」

GALAの出場基準や明確なきまりなどは特になく、おそらく開催側(今回はリオ五輪運営側)がセレクト→個々の選手に依頼→受けた選手が出場という流れだろうとのことだった。

日本では根付いていないGALA


日本人選手が一人も出ていなかったことについては、次のように推察する。
「日本ではGALAが根付いていないということがいちばんの理由だと思います。体操でも、フィギュアスケートでのエキシビションのように、上位者が出場するという流れが根付いていくと、逆にそれを目標にすることもあるかもしれませんが、少なくとも現時点では日本にそういった土壌はありません。そのため、もちろんGALAに選ばれるのは非常に栄誉あることですが、余分な負担になるのかもしれません」

ちなみに、新体操では海外試合でGALAを行うことも多く、新体操日本代表の「フェアリージャパン」や、新体操個人総合出場の皆川夏穂選手、五輪代表候補として鎬を削った早川さくら選手など、GALA用のプログラムを持つ選手もいるそう。


また、今回、中国選手4人による「人間縄跳び」や「人間タワー」などの超人的なアクロバットが話題となっていたが、これは残念ながら日本には浸透していないと言う。
「体操や新体操と同様に、『アクロ体操』という1つの競技があり、中国選手がやはり非常に強く、世界選手権もあるのですが、日本ではほとんど行われていません。全日本の大会もありますが、出場選手はかなり少ないのです」

男子新体操がアクロに近いということから、日本のアクロ人口を増やすべく、数年前から「兼業」のようなかたちで男子新体操チームが出場するようになってもいるそうだが、
「男子新体操とアクロではタンブリングも似ているし、人の上に人をのせる技なども似ていますが、ルールは全然違っているため、男子新体操として非常に素晴らしい演技をしても、減点になり、あまり得点が伸びないなど、本格化するには難しい面もあります」

GALAは外国では興業もあり、日本でも昨年、現役の体操選手たちとプロのパフォーマンス集団が集結し体操芸術を創りあげる『GYMNASTIC ART FESTA in the dream 2015 -夢の中の体操芸術祭- DOOR vol.1』が開催され、話題となった。
「体操、新体操は競技ですが、あれだけ鍛えられた肉体・技術・芸術性は得点を競うばかりではもったいない。もっと日本でもGALAのように見て楽しめるショーがあっても良いと思います」と椎名さんは言う。

今後、日本にももう少しアクロやGALAが根付いていくこと、そして2020の東京五輪ではぜひ体操GALAが行われることを期待したい。

(田幸和歌子)

※9月4日には「第27回全日本スポーツアクロ体操選手権大会」が開催される。男子新体操選手の出場もありそうだ。

※椎名桂子さんがメインライターをつとめる体操・新体操のWEBマガジン「ジムラブ」。