人と話す時、どこを見ていますか? 実は我々、相手の顔はまじまじと見ていない気がする。古舘伊知郎は「相手の話を掘り下げる時は相手の耳たぶを見る」と言ってましたが、納得です。



顔の中に手を入れ、芯を掴んで打撃を受ける


一方で、顔をまじまじと見るしかないブツを発見。最近、格闘技界でインパクト大のアイテムが話題となっています。
打ちづらいんじゃないか? 完全に人の顔の形をした打撃用“顔型ミット”の意図はなんだ

マネキンではありません。これは、『オールストライク ミット』(税抜9,800円)なる商品。そうです、ミットなんです。

ちょっと、凄くないですか? 殴ったり蹴ったりがはばかられそう。なんでこんな形なのか? 用途は? 面白さを狙っているのか? その辺について、このミットを取り扱っている「フィットネスショップ 水道橋本店」の平川智也さんに伺いました。
平川さんは同店スタッフであり、同時に総合格闘家で“火の玉ボーイ”五味隆典の愛弟子でもあります。
打ちづらいんじゃないか? 完全に人の顔の形をした打撃用“顔型ミット”の意図はなんだ


まず、このミットはどんな競技の練習に適しているのでしょう?
「ボクシング、キックボクシング、総合など、顔面への打撃が可能な格闘技です」(平川さん)
でも、単純に打ちづらそうだし、受けづらそうに見えるのですが……。
「たしかに、“受ける側”からすると慣れるまで時間が必要かもしれません。インパクトの箇所によって、ミットを持つ手が持って行かれる時があるんですね」(平川さん)
このミット、“受ける側”は顔の中に手を入れる必要があります。顔の中にある芯(棒)を掴んで打撃を受けるのです。
打ちづらいんじゃないか? 完全に人の顔の形をした打撃用“顔型ミット”の意図はなんだ

でも、「持って行かれる時」があるんですよね……?
「だから、全力で打ち込む練習にはオススメできないです。
顔の形状をしているので薄い部分がどうしてもありますし、力を抜いてコンビネーションを鍛える練習に向いていると思います。ミットを動かし、相手の頭の位置を想定して打ち込む練習にも効果的です」(平川さん)


より実戦に近い“当て感”を養うことができる


ならば、聞きたい。こんな形状にしたことで、どんなメリットが生まれるのだろうか。もしかして、対戦相手とかムカつく奴の顔を思い浮かべて殴ったり蹴ったりするためですか?
「あぁ、相手の写真をミットに貼って殴るみたいな使い方ですか? そういう人も中にはいるかもしれませんが、競技者としてはこのミットの良さをもっと理解していただきたいです」(平川さん)

このミット、見てくれがこんなだからパッと見の面白さが先行してしまいがちですが、ちゃんと実用的なメリットも併せ持っているというのです。
「通常のミットだと、受ける側が角度を変えないといけないんですね。アッパーの場合は下に向け、フックの場合は横に向ける。
でも、オールストライクならばそのままでいいんです」(平川さん)
真正面を向かせたまま、打撃を受け続けていい。アッパーを打ち込めば顔のアゴに入るし、フックを打ち込めば横っ面に入る。ミットが急所を表してくれているので、より実戦的な練習に励むことができます。
打ちづらいんじゃないか? 完全に人の顔の形をした打撃用“顔型ミット”の意図はなんだ

「実際、私もこのミットは試したことがあります。総合の場合はグローブが小さくボクシングよりも素手に近いですよね? だから、このミットは“当て感”を養う練習でとても効果的です」(平川さん)

たしかに、相手の顔を想定した打ち込みってスパーリングでのみ可能な練習でした。でも、この形状にしちゃえばミット打ちでも可能になる。

「“相手の顔を想定した練習”の機会を一つ増やすことになりますよね」(平川さん)
事実、購入者からは「相手の顔面をイメージできるので使いやすい」という反響が数多く寄せられているそうです。

ちなみに、この『オールストライク ミット』はアメリカ製だそう。アメリカといえばUFCがあるし、ボクシングの本場でもあります。
「格闘技における最先端の考え方が、このミットには反映されています。弊社の上司がアメリカの展示会でオールストライクを発見したのですが、実戦のためのトレーニングとして重宝するし、キャッチーな面白さもある。“日本にはない物だ!”と、昨年7月より日本での取り扱いをスタートしています」(平川さん)


ぶっちゃけ言わせてもらうと、このミットを初めて見た時は笑いました。
素人目からすると、プッと吹いてしまいそうな面白さが第一に来る。でも、実はちゃんとしたメリット・実用性がこの形状にはありました。
あと、やっぱりこれは日本人にはなかなかできない発想でしょうね。メーカーの企画会議で提案しても、仲間から笑って止められちゃいそうな気がします。でも、長所は真面目にちゃんとあります。
(寺西ジャジューカ)