国産キクラゲがいま人気の3つの理由 栽培農家に要因を分析してもらった 

その歯ごたえからさまざまな料理に欠かせない食材「キクラゲ」だが、ある日ネットで「いま、第二次国産キクラゲブームがきている」という書き込みを見つけた。
えっ、「第二次キクラゲブーム」? 

てか、第一次はいつだったの?


というわけで、この書き込みをしていた、「スマート・ネット株式会社」(福岡県)に尋ねてみた。ここは農産物の栽培指導を行っている会社だ。


「4~5年前ほど前に一度、国産キクラゲの栽培ブームが起きました。これが”第一次国産キクラゲブーム”といえます。その時は中小企業などが新規事業として参入したのですが、販路の確立がうまくできず、需要と供給のバランスがとれなかったのです。

しかし最近はキクラゲの栄養価が非常に高いことも注目されていることもあり、病院食や学校給食などにも取り入れられ、販路が確立されつつあります。また、全国展開している長崎ちゃんぽんのチェーン店にも国産キクラゲが卸されるようになったと聞きます。このような要因から、第二次国産キクラゲブームが到来しているようです」

そんな国産キクラゲ人気の要因とは?

「国内消費のキクラゲの98%は中国産で、国内自給率は1%に満たないのですが、国産キクラゲは、中国産と比べてプリプリとしていて食べやすい。
また中国産キクラゲの安全に対する不安も取りざたされていることから、より国産に対するニーズが高まっています」(同)


食べる漢方!?


キクラゲの栽培農家に聞いてみると、さらなる理由が浮かび上がってきた。

「キクラゲの鉄分はレバーの3倍、カルシウムは牛乳の2 倍ともいわれています。ある男性は健康診断で貧血と言われたのですが、毎日お味噌汁に入れて食べていたら1年後の診断で解消されていたそうです」
こう語るのは、2年前からキクラゲを栽培している栃木「ともちゃん農園」の佐藤知子さん。栽培のきっかけは「震災のあと原木シイタケの出荷が出来なくなったから」とのことで、「キクラゲの菌床(きんしょう)栽培なら女性でも手軽にできる」と知り合いの農家から薦められたという。

「2年前、200個の菌床から始めた栽培を、去年からは400個に増やした」という佐藤さん。販売しているのは「生キクラゲ」と、それを加工して作る「乾燥キクラゲ」の2種類で、道の駅や直売所、スーパーなどに卸している。一方、自ら発信しているSNSを見たお客さんが遠方から直接買いに来てくれるなど、国産きくらげの需要の高さを肌で感じているという。
「今年は新しい栽培ハウスを建て、1200個の菌床を栽培する予定」だとか。

確かに需要は高まっているようだ。

さらにキクラゲの栄養価の高さを指摘してくれたのは、山口県で純国産の生キクラゲを生産、加工、販売している株式会社サンアローの近安裕司さん。こちらではシロキクラゲ、クロキクラゲ、刻みキクラゲを詰め合わせにした「笑顔のきくらげ」という商品を販売。売上も上々で、今や在庫がほとんどないほど。さらに新規参入したい農家さんからの問い合わせも殺到しているという。


国産キクラゲがいま人気の3つの理由 栽培農家に要因を分析してもらった 
「笑顔のきくらげ」  おしゃれなパッケージが目を惹く

 
「キクラゲにはビタミンDも豊富です。ビタミンDはカルシウムの吸収力アップや骨密度の維持など、骨代謝にも深く関与しています。さらには不溶性食物繊維も多く含まれています。保水性の高い不溶性食物繊維は、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を刺激して通じを良くする働きがあります。もちろん鉄分、カルシウムも多い。キクラゲは古くから中国で強壮食品として珍重されてきましたが、いわば食べる漢方というわけです」(近安さん)

もともとは障害者の就労支援の一環として立ち上げたというキクラゲの関連事業。
「従来の農作業は管理が大変で重労働でした。もっと簡単で収益があがるものがないかということで着目したのがキノコ。ただし大手のキノコ製造メーカーも扱っていないものを調べ、マイナーな中でも有名なキクラゲに行きついた」という。
 

キクラゲの歯ごたえをジュースに!?


キクラゲの見た目のウィークポイントをうまくカバーしたのが、これまでバジルシード(バジルのタネ)の清涼飲料水などユニークな商品を開発してきた大阪の食品メーカー「アシストバルール」だ。

3年前タイに出張に行ったとき、シロキクラゲのドリンクを見かけたことを契機に、日本人好みの食感や味にもこだわった、新感覚のシロキクラゲ入り清涼飲料水「ホワイトマッシュドリンク」を製品化。キクラゲのシャキシャキ感が楽しめるとのことで、味は杏仁豆腐味、スイートハニー味、ミックスベリー味、パッションフルーツヨーグルト味の4種類。


国産キクラゲがいま人気の3つの理由 栽培農家に要因を分析してもらった 
パッションフルーツヨーグルト味のシロキクラゲ入りドリンク


「食品見本市で、キクラゲに関する商品を出展する企業が増えてきたのを見かけると、キクラゲの注目度の高まりを感じます」(「アシストバルール」広報・勝村さん)

安全性、高い栄養価、安定収益、この3つの要因から人気が高まっている国産キクラゲ。今後も大いに注目していきたい。