そんな一風変わった仏像の魅力に迫るトークイベント「川口にもある?! ミステリーな仏像!」が埼玉県川口市のメディアセブンで開催された。

一風変わった神仏の謎に迫る、神仏探偵とは!?
今回のトークショーの語り手は、不思議な仏像に魅せられた「神仏探偵」こと本田不二雄さん。今年2月に刊行の『ミステリーな仏像』の著者でもある本田さんが、不思議な仏像に魅せられたきっかけは一体何なのだろうか? また、神仏探偵とはどんなものなのだろうか? 直接話を聞いた。

元々は仏教にも仏像にも特に興味はなかったという本田さん。出版社勤務時代、神社や仏像などの書籍や雑誌の作成に携わる中で、一般的な形とは異なる不思議な仏像たちと出くわすこととなった。
覆面をした観音菩薩、縄でぐるぐる巻きにされたお地蔵様、ミイラのように痩せ細った阿弥陀仏などなど……。見れば見るほど謎や疑問が湧いてくる仏像にどんどん惹きつけられていったと本田さんは言う。

「基本的に決められた形があるはずの仏像が、どうして規格外の姿・形となったのか。その姿でなければならない理由が、そこには必ずあるはずなのだ。それが気にならずにはいられない」
そのシンプルな思いから、神仏探偵としての活動が始まったという。不思議な仏像の謎を解くため、管理する住職さんに話を聞いても、由来を知らない場合も多いという。地元の方に話を聞いたり、文献やネットを駆使したりして情報を集めるが、なかなか簡単に謎解きとはいかない場合が多いとのこと。
「資料が残っていないことも多く、必ずしも答えに辿り着くとは限らない。導いた答えが正しいかどうか分からないことも多い。だがそれでも、推察しながら一つずつの過程を大切に、自分なりの答えを出す。
神仏探偵おススメの、ミステリーな仏像
そんな神仏探偵、本田さんが魅了された「ミステリーな仏像」とはどんなものなのか。トークイベントにも参加した。
会場はほぼ満席で60人ほどのお客さんが参加。年齢層も幅広く、20代の方から80代の方までと、世代を問わず興味のある分野であることがわかる。中でも40代から60代の方が多いように見受けられた。

イベント内では、本田さんの著書『ミステリーな仏像』で紹介されている変わった仏像の中から、開催場所の川口市にある「抱き地蔵」をはじめ、地蔵菩薩を中心に40点ほどの仏像が紹介された。

どれもがこれまで見たことがないような仏像で、とても興味深く、その由来を聞くとより親しみをもてる。中でも印象的だった仏像をいくつか紹介しよう。
・智恵光院 六臂地蔵

六地蔵が一つに合体したものであり、その理由が、各地の六地蔵をそれぞれ巡礼するのも大変だろうと、六地蔵それぞれの腕を取り入れた一体を彫ったと。参拝者にとってはなんともありがたいお地蔵様である。
・退耕庵 玉章地蔵


美人として有名な小野小町のラブレターを貼り付けたお地蔵様。それだけ聞くとなんともミステリーだが、ラブレターという念のこもったものを、お地蔵様に託して昇華してもらおうとしたのではないかと言われると、なるほどと納得できる。
・塩かけ地蔵

太宗寺にある「塩かけ地蔵」は、おできの平癒にご利益があるとのこと。お地蔵様が塩まみれな理由はその祈願法にある。まずはお地蔵様の前で手を合わせ、治したい箇所の治癒を祈願する。そして、お地蔵様の身体に積まれた塩を少しいただき、帰って治したい箇所にその塩をふりかける。
その箇所が完治したら、いただいた倍の塩をお地蔵様にお返しするのである。つまり、参拝客が増えれば増えるほど、お地蔵様のまわりの塩は、倍々と増えていくのである。
・おしろい地蔵

・しばられ地蔵

身近なお地蔵様だからこそ、人間の様々な願い・厄を引き受け、その形も様々なものとなる。記事内で紹介したのはほんの一部だが、どの仏像も一目みてインパクトがあり、その由来を聞くことで、より仏像を身近に感じることができた。
参加者は真剣に耳を傾け、メモを取りながら聞く人も。イベント後には、本田さんの著書を購入する方も多く、仏像の世界の関心の高さが感じられた。
イベントの最後、本田さんはこう締めくくった。「仏像が祀られるのには理由がある。

お地蔵様と一言で言っても、その世界は幅広い。今回紹介されただけでも15以上のバリエーション豊富なお地蔵さんがあり、その幅・多様性にあらためて気づかされる。
神仏の世界に興味はあるが何から学んだらいいのか分からない。堅苦しい形式が苦手。そんな方にも、ミステリーな仏像はあらたな仏像鑑賞のヒントを与えてくれる。
見た目が不思議な仏像は一体どんな謎を抱えているのか。そんな謎解き視点で仏像を見てみるのも、新たな世界への入り口として面白いのかもしれない。
(おぜきめぐみ/イベニア)



『ミステリーな仏像』 本田不二雄(駒草出版)