パリのホテルで「休憩」利用が増えている。世界中から人々が訪れる街パリ。
至る所にホテルはあるが、そこを「宿泊」だけではなく「休憩」場所として使うことが認知され始めている。1つのきっかけとなっているのが「Dayuse.com」というサイトだ。

ラブホとしての利用も !? 「休憩」サービスが広がるパリのホテル


サイト名にもなっている「デイユース」とは、宿泊しない日中の客室利用のこと。同サイトでは、日付と利用したい時間帯を入力すれば、その条件にあったホテルを「時間貸し」で探せる。

予約にはクレジットカードや頭金はいらず、キャンセルも無料。現在、欧州と北米合わせて、12カ国100以上の都市でサービスを展開し、客室数が少ないプチ・ホテルから大手チェーンまで検索可能だ。
この「休憩」サービスが現地で注目されている。


ホテルで「休憩」する客は以前から一定数いた


例えば空港に隣接したホテルなどは、乗り継ぎ時間が長い客向けに一律したチェックイン時間を設定せず、時間貸しすることは多い。一方で、街中にあるホテルは、時間貸し料金を通常掲げていない(カテゴリー別の宿泊料金の掲示は法律で定められている)。じつはホテルを休憩場所として使うことは、何も新しいことではない。パリ市内の4つ星ホテルに聞いたところ、そのような使い方をする人は、以前からしばしばいるそうだ。

同ホテルによれば、チェックインもしくはチェックアウトの前後に追加利用するビジネスマンや観光客から、密会に使うフランス人カップルまで、客の利用目的は様々だという。同ホテルも、時間貸し料金を公に示してはいないが、客からの問い合わせがあれば対応し、料金は最大で宿泊料金の半値ほど。
この裏メニューのようなサービスをDayuse.comは、まとめて検索できるようにした。

ラブホとしての利用も !? 「休憩」サービスが広がるパリのホテル
(C)Dayuse.com


「時間貸し」は客にとっても選択肢が増えることに加え、ホテル側にもプラスになる。Dayuse.comによれば、通常昼間のホテルの空室率は7割に上るという。ところが同サイトから客を誘導することで、チェックアウトからチェックインまで、本来は空室として遊ばせている部屋に客を入れられる。部屋の稼働率を上げられるのだ。


ラブホテルとして使う客もいる


Dayuse.comによれば同サイトの利用目的は、ビジネスなど出先での予定の空き時間または観光、ショッピング合間の休憩をはじめ、飛行機の乗り継ぎ時間の軽い昼寝、インタビュー用の場所、カップルの逢瀬などを想定しているという。


潜在的な顧客の掘り起こしは、Airbnb(部屋を貸し借りできるサービス)など滞在の形が多様化し、客がホテル以外に分散傾向にある現在において、新しい集客手段となる可能性を秘めている。同サイトを立ち上げたフランス人ダビッド・ルベ氏は、仏フィガロ紙において「我々はAirbnbで失われたホテルの利益を10%押し上げる手助けになる」と答えた。

多数のホテルを抱えるパリで「休憩」が表メニューとして根付くのか。その潮流は広まろうとしている。
(加藤亨延)