NHKが1960年から5年に1度、日本人の生活スタイルなど調べている「国民生活時間調査」によると、日本人の平日の睡眠時間は、この50年間ずっと減り続け、かつてと比べて約1時間は短くなっている。

現代人は寝る時間を削ってでも生活時間を確保しようとしているのかもしれないが、睡眠について問題を抱えながら、その解決方法がわからないという人は多いのではなかろうか? そこで、ふたりの専門家に眠りにまつわる知識の「ウソ・ホント」を聞いた。


まずは「寝だめ」について。休日には「寝だめ」をするという人も多いだろうが、本当にできるのだろうか? スリープクリニック調布の遠藤拓郎(えんどうたくろう)先生が説明する。

「睡眠をお金にたとえるならば、睡眠は借金できるし返済もできる。でも、貯金はできません。週末の寝だめは、貯金ではなくて睡眠不足という借金の返済となります。その際、注意すべきは普段の起床時間(午前5時半から午前8時半の間)は変えずに、寝る時間を前倒しして早く寝ることです。
早く寝ることにより就寝後3時間の間に分泌される古い細胞を新しい細胞にしてくれる『成長ホルモン』も分泌されますし、起床時間を変えないことで、夜寝ている間のエネルギー補給をしてくれるホルモン『コルチゾール』の分泌サイクルも崩れません」

どうやら「寝だめ」できるというのはウソのようだ。睡眠の貯金はできないが、週末に長めに寝られる人は早寝して借金返済に努めよう。

次に、夜中に目が覚めたら「寝ない」のが一番というのは本当だろうか。この疑問は、日本睡眠学会所属の坪田聡(つぼたさとる)先生が解説する。

「翌日のパフォーマンスを低下させないためには、やはり睡眠を取る必要があります。まずは目をつぶって眠れるようにするといいです。
しかし、30分ほどたっても眠れないようなら、そのまま無理に『寝よう、寝なければ』と焦っても神経が高ぶって逆効果です。寝床を出て、できればほかの部屋へ行き、ゆっくり本を読むなどリラックスできるようなことをして、眠くなったら寝床に戻るようにします。このとき、寝床から出てケータイやパソコンなどを使ってしまうと、モニターの光で目が覚めてしまいかえって逆効果となります。また、温かい飲み物を飲むのもいいでしょう。その際も、コーヒーや日本茶などカフェインが入ったものはなるべく避けたほうがいいです」

というわけで、これもウソ。目が冴えたとき、ついついスマホをチェックしてしまいがちな人は要注意だ。


それでは、オフィスで突如襲ってくる睡魔の原因は「昼食」にあるというのは本当か?

「もともと、人間は午後1時から3時の間に強い眠気を感じる生体リズムを持っているのですが、昼食による体温の一時的な上昇と下降によって眠気をさらに促してしまいます。特に温かいもの、辛いものには注意が必要でしょう。そのほか、炭水化物をたくさんとると、眠気とだるさにもつながります。昼食はなるべく冷たいもの、例えば『ざるそば』『冷ややっこ』などがオススメです」(遠藤先生)

こちらはホントという答えが出た。正しい知識を学んで、気持ちのいい眠りと目覚めを手に入れたいものだ。

(取材・文/頓所直人)

■週刊プレイボーイ49号「男の睡眠にまつわるウソ・ホント16」より

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