昨日、あるツイートが大きな話題を呼んだ。なんと、あの通販会社・ジャパネットたかたの通販番組で「反戦」が叫ばれた、というのだ。



〈「僕は戦争のない世の中にしたいんだ!」と聞こえてきて、何かと思ったら『ジャパネットたかた』の元社長が子供向けの歴史本を紹介していた。「今こそ歴史を学ぶべきなんです!」と力説してて泣きそうになった。OPのCGもカットした、たかたの本気〉

 Twitter上にこう投稿したのは、映画『童貞。をプロデュース』やテレビドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』(テレビ東京)などの作品で知られるドキュメンタリー作家の松江哲明氏。元社長、ということは、個性的な声でおなじみの高田明氏がプレゼンターだったようだ。

 実際、調べてみたところ、昨日9月7日、9時29分からの30分枠でテレビ東京にて放送された『快適!ショッピングスタジオ』で、「学研まんがNEW日本の歴史 別巻つき13冊セット」(「歴史人物要点かるた/歴史年号暗記かるたセット」のオマケつき)が紹介されている。


 本サイト編集部でも「これはぜひ観てみたい!」と思い、さっそくジャパネットたかたへ電話。しかし、残念ながら「再放送の予定はまだありません」との回答だった。

 それにしても、「吸引力がすごいんです!」などという常套句は馴染みがあっても、「僕は戦争のない世の中にしたいんだ!」というような熱い主張はこれまで一度もお目にかかったことはない。さぞかし松江氏もびっくりしたことだろうが、発言やオープニングの陽気なCGまでカットしたということがほんとうならば、高田氏の本気が伺えるというものだ。

 というわけで、放送の視聴が叶わなかったため、今回、本サイト編集部では、高田氏が熱くプレゼンテーションした『学研まんがNEW日本の歴史』(監修・大石学/学研マーケティング)を読んでみた。

 まんがで歴史を紹介するという、きっと多くの人が学校の図書室などで見たことがあるであろうシリーズだが、久々に手にとって驚いた。
筆者がこのシリーズを読んだ1980年代は貸本時代の画風のような絵柄だったが、現在のものは萌え要素が感じられる絵になっている。事実、第10巻『近代国家への歩み~明治時代後編~』のまんがを手がけているのは、『ラブライブ!』のSD挿画などを担当している清瀬赤目氏。伊藤博文も田中正造も「なんかかわいい」のである(一方、第11巻に移ると、今度はぐっと大人っぽい絵となり、平塚らいちょうや芥川龍之介、昭和天皇までもが妙に色っぽい)。

 ただ、肝心の内容は、旧版に比べると国内の事情に割きすぎているきらいはある。旧版では、韓国併合を「日清・日露戦争でさんざん国内をあらされ」た韓国国内の反発にもふれ、日本が強引に植民地化を進めていったことが描かれるが、この新版ではそうした描写がない。また、軍部の暴走や戦時体制における弾圧、大政翼賛会の支配構造などは、議会の流れと国民の目線が織り交ぜられた旧版のほうがわかりやすい。
しかも、太平洋戦争に突入すると新版は駆け足で、さすがに空襲による被害などはオールカラーの新版のほうが迫力はあるが、日本兵の多くが飢えや病気で亡くなったこと、大本営発表で国民が騙されたこと、特攻などの無謀な作戦の不条理などは新版には描かれていない。

 そもそも、旧版では明治後期~終戦まで3巻を費やしているが、新版は2巻で消化している。この扱いの縮小からも"触らぬ神に祟りなし"という出版社側の及び腰姿勢がわかるかのようだ。

 高田氏が言ったという「僕は戦争のない世の中にしたいんだ!」という気持ちには全面的に共感するが、もしそうならば『はだしのゲン』全巻セットなどのほうが、歴史修正の波に対抗できたような気もする。ぜひ高田氏とジャパネットたかたには、今後も反戦のための商品展開を期待したいところだ。
(編集部)