韓国が揺れている。韓国経済の悪化が進んでおり、かなり深刻化している。

11月30日に韓国の統計庁が発表した2016年10月の「産業活動動向」によると、全産業生産は前月より0.4%減少、9月の同0.8%減に続いて、2カ月連続で後退し、製造業平均稼働率も70.3%となり、9月の71.6%からさらに悪化している。

 背景としては政治の混迷も大きい。しかし直接的な経済面での影響でいうと、やはりサムスンの不振が大きな要因となっていることは間違いない。発火事故に端を発し、新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」は生産・販売中止が決まり、その影響から景気減速につながっており、統計面にも表れている。

 こうしたサムスンの不振は、景気動向が好転し始めた日本企業にとって、喉元の骨のように気がかりな要素となっている。

 韓国の政治的混乱がどのように収束するのか、そして韓国経済の今後の動向がどうなるのか、あるいはサムスンの復活のタイミングなどがどうなるかは、議論があるところだろう。
本稿では、実際にサムスンの不振が続くことで、日本の電機業界にどのようなかたちで影響が表れ始めているかについて、いくつかの具体例を挙げてみる。

●サムスンと取引関係がある日本企業

 電機業界の調査会社である弊社クリアリーフ総研が提供する仕入先・販売先検索システム「エレサーチ」による検索では、サムスンを取引先に持つ日本国内のうち、上場会社だけをピックアップして掲載したものが下記のとおり(非上場も含む全体一覧はエレサーチ会員向けに提供)。

 アドテックエンジニアリング、アドバンテスト、イビデン、インターアクション、エスペック、オリジン電気、加賀電子、キヤノングループ、クボテック、SUMCO、ザインエレクトロニクス、シチズングループ、シャープ、新川、太洋工業、TDK、トーメンデバイス、東京エレクトロン、東京精密、日本電産コパル、日本電子材料、日本マイクロニクス、ニューフレアテクノロジー、日立グループ、富士機械製造、双葉電子工業、ブイ・テクノロジー、ホシデン、丸文、村田製作所、ヨコオ、リバーエレテック、リョーサン、レーザーテック、ワイエイシイ、ワコム

 ほかにも小口取引などあるところも加えると、国内企業の大半がなんらかのかかわりがあると思われ、サムスン不振の影響は国内電機業界にとって決して小さくない。以下、いくつかその具体的な事例をみてみる。

●サムスン電子ジャパン

 韓国サムスングループの日本法人であり、ギャラクシーシリーズなど携帯電話端末販売およびLTEなどの次世代通信装置の国内販売を主に手がけているサムスン電子ジャパン(東京都千代田区)は、実は2015年12月期からすでに大幅に業績が悪化している。

 サムスン電子ジャパンの同期は、売上高が前年比32.2%減の1284億3000万円で、営業利益は37億1400万円の欠損(前年は53億3600万円の黒字)、経常利益は37億1400万円の欠損(同52億2300万円の黒字)、純利益は67億4300万円の欠損(同29億6900万円の黒字)となっている。
16年12月期は残すところあと1カ月を切っており、期中にギャラクシーのトラブルもあったなか、どのような業績に収まるのか、注目が集まる。

●双葉電子工業

 日本企業の実例もひとつ挙げておこう。ディスプレイの蛍光表示管で大きなシェアを持つ双葉電子工業は、先に17年3月期の業績予想を、従来の黒字見通しから赤字に見直している。その理由について「韓国市場の低迷を背景に、韓国サムスン電子スマホ向け部品の販売不振などが響いている」とはっきりと説明している。

 ちなみに双葉は、16年3月期は最終欠損だった。今期は黒字回復を予想していたが、サムスン向け不振を理由に赤字予想に切り替えており、予想通りならこれで2期連続の最終赤字となる。
14年3月期に7年ぶりの黒字回復を果たした後、15年3月期も黒字を確保していたが、16年3月期からは再び赤字経営が続く状況となっている。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)